当事者の予想しえない郵便遅配のため上告期間経過後に到達した上告の申立につき、高等裁判所が追完の事由の存否の職権調査を尽くさないで上告却下の決定をしたときは、右決定に対し、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
上告期間経過後の上告申立につき追完の事由があるにかかわらずその職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下に対する不服申立方法
民訴法596条,民訴法566条,民訴法159条,民訴法429条,民訴法420条1項9号
判旨
上告状を郵便で発送した際、通常であれば期間内に到達するはずであったにもかかわらず、予測不可能な郵便争議による遅配が生じた場合は、「当事者がその責めに帰することができない事由」により不変期間を遵守できなかったものとして、期間の追完が認められる。
問題の所在(論点)
上告状を郵送した際に生じた予測不可能な郵便遅配が、民事訴訟法上の「当事者がその責めに帰することができない事由」に該当し、期間の追完(上告提起の適法化)が認められるか。
規範
不変期間を遵守できなかったことが「当事者がその責めに帰することができない事由」によるもの(民事訴訟法97条1項、旧159条)といえるためには、当事者が善良な管理者の注意を尽くしても、なお期間を遵守できなかったことが必要である。通常予測できない特段の事情(郵便争議による遅配等)により期間内に到達しなかった場合には、この要件を満たし、期間の追完が認められ得る。
重要事実
申立人の代理人は、上告期間の満了する2日前に上告状を書留郵便で発送した。通常であれば翌日には裁判所に到達するはずであったが、郵便局員の休暇戦術(争議行為)という異例の事態により郵便処理が滞り、上告期間を経過して到達した。原審はこれを単なる期間経過として上告却下決定を行ったが、申立人は発送当時において争議による遅配は予測不能であり、追完の事由があると主張した。
事件番号: 昭和42(ク)270 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: その他
上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対しては、上告期間内に上告の提起があつたことを理由として、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
あてはめ
申立代理人が上告期間内に到達するよう余裕を持って上告状を発送した事実は、受領証等により裏付けられている。発送当時において郵便争議による遅配が予測できなかったのであれば、当事者にそれ以上の回避義務を課すことはできず、期間内に到達しなかったことは当事者の責めに帰すべからざる事由にあたる。原審は、追完事由の存否を職権調査することなく直ちに不適法として却下しており、判断遺脱の過ちがある。
結論
本件遅配が予測不能な事態によるものであれば追完が認められる余地があるため、原決定には再審事由(判断遺脱)に準ずる瑕疵がある。よって、本件を管轄裁判所へ移送し、追完の成否を含めて再審理させるべきである。
実務上の射程
郵便事故や予測不能なストライキによる遅配を追完事由として認めた重要な先例である。答案上は、期間徒過の救済を論じる際、当事者の注意義務の程度(通常予見可能な範囲か否か)を判断する基準として活用できる。
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…