適法な期間内に上告理由書の提出があつたにもかかわらず、上告受理通知書の送達日時に誤記のある送達報告書に依拠し、十分な職権調査を尽すことなく、期間徒過の提出と判断して上告却下の判決をした場合は、民訴法第四二〇条第一項第九号の再審理由にあたる。
民法第四二〇条第一項第九号の再審事由にあたるとされた事例。
民訴法420条1項9号,民訴法398条1項,民訴規則50条
判旨
送達報告書の誤記により上告理由書の提出が期限徒過と誤認され、上告却下判決がなされた場合、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したものとして、再審の事由(旧民訴法420条1項9号)に該当する。
問題の所在(論点)
送達報告書の誤記に基づき、適法な上告理由書の提出を期限徒過として却下した判決について、民事訴訟法上の再審事由(判断遺脱)が認められるか。
規範
判決の基礎となる訴訟手続上の重要事実(上告理由書の提出期限の成否等)について、送達報告書の誤記に依拠し、職権調査を尽くさずに判断を誤って上告を却下した場合には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したものとして、再審事由に該当する。
重要事実
上告受理通知書の送達報告書には送達日時が「昭和37年3月7日」と記載されていたが、実際には翌8日であった。最高裁第二小法廷は、この報告書の記載に基づき、同年4月27日に提出された上告理由書が法定期間を1日徒過しているとして上告却下判決を下した。しかし、郵便局の証明書等によれば、報告書の記載は取扱者の不注意による誤記であり、実際には期間内に提出されていたことが明白となったため、上告人が再審を申し立てた。
事件番号: 昭和42(ク)270 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: その他
上告期間起算日について誤記のある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽くさないでされた高等裁判所の上告却下決定に対しては、上告期間内に上告の提起があつたことを理由として、民訴法四二九条、四二〇条一項九号の規定により、再審の申立をすることができる。
あてはめ
本件では、郵便局長作成の証明書や郵便送達委任簿の記載等の客観的証拠に照らせば、送達報告書の年月日時欄の記載は誤記であり、事実上の送達日は報告書より1日遅いことが明白である。それにもかかわらず、前訴判決は十分な職権調査を尽くさず、誤記ある報告書に依拠して期間徒過と判断し、本来適法な上告を却下した。これは、判決の前提となる重要な訴訟手続上の事実の判断を誤ったものであり、実質的に「判決に影響を及ぼすべき重要な事項」についての判断を遺脱したものと評価される。
結論
本件再審の申立てには理由があり、前訴却下判決は破棄される。ただし、改めて上告理由を審理した結果、本案の上告理由は認められないため、上告自体は棄却される。
実務上の射程
送達報告書の不備や誤記という形式的な瑕疵に依拠して裁判を受ける権利を不当に奪った判決を、再審によって是正できることを示した事例である。答案上は、訴訟手続の前提事実に関する誤認が「判断遺脱」に含まれ得る点を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和37(オ)511 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告理由書の提出期限は民事訴訟規則等の規定に基づく法定期限であり、期限を徒過して提出された上告理由書は不適法として上告却下の対象となる。 第1 事案の概要:上告代理人に対し、昭和37年3月7日午前10時5分に上告受理通知書が送達された。これに対し、具体的理由を記載した上告理由書が原裁判所に提出され…
事件番号: 昭和32(ヤ)25 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】上告裁判所は不服申立ての限度でのみ調査義務を負うため、上告理由として主張されていない事項や、適法な期間経過後に提出された補充書記載の事項について判断を示さなくとも、判決に影響を及ぼすべき重要な事項の判断遺脱(民事訴訟法第338条1項9号)には当たらない。 第1 事案の概要:再審原告は、前審の上告判…
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…
事件番号: 昭和37(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和39年9月15日 / 結論: 破棄差戻
大阪市内の郵便局に書留速達郵便物として差し出した控訴状が、通じて四日を費して名古屋市内の裁判所に配達され、控訴代理人の予知できない事情に基づく郵便物延着の疑をさしはさみうるにかかわらず、この間の事情を審究せず、右郵便物配達の時にはすでに控訴期間が経過していたとの理由で、控訴を不適法として却下した判決には、審理不尽の違法…