公営住宅建替事業の施行に伴い事業主体の長が公営住宅法(昭和五五年法律第二七号による改正前のもの)二三条の六に基づき入居者に対して明渡請求をする場合には、借家法一条の二所定の要件を具備することを要しない。
公営住宅建替事業の施行に伴い事業主体の長が入居者に対してする明渡請求と借家法一条の二の要件を具備することの要否
公営住宅法(昭和55年法律第27号による改正前のもの)23条の6,借家法1条ノ2
判旨
公営住宅建替事業に伴う入居者への明渡請求(改正前公住法23条の6)において、事業主体が同法所定の要件及び手続を充足している場合には、借家法1条の2の正当事由を具備する必要はない。
問題の所在(論点)
公営住宅建替事業に伴う入居者への明渡請求(公住法23条の6)を行うにあたり、同法所定の要件とは別に、借家法1条の2に定める「正当事由」を具備する必要があるか。
規範
公営住宅法(昭和55年改正前)の建替事業に関する規定は、事業主体の画一的かつ迅速な事業施行を可能にする一方、入居者に対し仮住居の提供、新住宅への入居保障、移転料の支払等の保護措置を講じている。したがって、同法23条の6に基づく明渡請求に際しては、同法所定の要件・手続を充足すれば足り、借家法1条の2(現在の借地借家法28条)が定める「正当事由」の具備は不要である。
重要事実
公営住宅法に基づく公営住宅建替事業を施行する事業主体(被上告人)が、当該住宅の入居者(上告人)に対し、同法23条の6に基づき明渡請求を行った。上告人は、建物の賃貸借関係において借家法が適用されるべきであり、明渡請求には正当事由が必要であると主張して争った。
あてはめ
本件における事業主体の明渡請求は、公住法所定の建替事業に関する要件及び手続をすべて充足している。同法には仮住居の提供や新住宅の入居保障といった入居者保護の仕組みが組み込まれており、公法的な建替事業の迅速な遂行という目的と調和が図られている。そのため、私法上の借家法による制約(正当事由の要件)を重ねて課す必要はないと解される。
結論
公住法所定の手続を充足している以上、借家法上の正当事由は不要であり、本件明渡請求は正当として認容される。
実務上の射程
特別法である公営住宅法に、入居者保護の代替措置を伴う独自の明渡規定が存在する場合、一般法である借家法の正当事由規定は排斥されるという特別法優先の理を示している。行政法・民事法の交錯領域において、法令の目的・構造から適用除外を導く際のロジックとして重要である。
事件番号: 昭和27(オ)446 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
借家法第一条の二にいわる「正当の事由」とは、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照し妥当と認むべき理由をいい、賃貸人が自ら使用することを必要とする一事により、直ちに「正当の事由」ありとはいえない。