納税者が租税特別措置法二六条一項の規定により事業所得の金額を計算し確定申告をした場合には、たとえ実際に要した必要経費の金額が右規定による必要経費の金額を超えるため納付すべき税額が多くなつたとしても、納税者としては、そのことを理由として国税通則法二三条一項一号による更正の請求をすることはできない。
納税者が租税特別措置法二六条一項の規定により事業所得の金額を計算し確定申告をした場合と国税通則法二三条一項一号による更正の請求の許否
租税特別措置法26条,国税通則法23条1項1号
判旨
納税者が租税特別措置法に基づく概算経費計算を選択して確定申告をした場合、後に実額計算の方が有利であったとしても、国税通則法23条1項1号の「計算に誤りがあったこと」等には該当せず、更正の請求は認められない。
問題の所在(論点)
納税者が自らの意思で措置法26条1項の概算経費計算を選択して申告した場合において、後日、実額計算との差額を理由に国税通則法23条1項1号に基づく更正の請求をすることができるか。
規範
国税通則法23条1項1号にいう「計算の誤り」等とは、申告内容が客観的な事実や法の規定に反している場合を指す。納税者に所得計算方法の選択権が与えられている場合、法に従い適正に計算して申告した以上、たとえその選択の結果が税負担の面で不利であったとしても、客観的な「誤り」は存在せず、後から選択をやり直すための更正の請求は認められない。
重要事実
医師である被上告人は、昭和54年分の所得申告において、租税特別措置法(措置法)26条1項を適用し、概算による必要経費の控除を選択して確定申告を行った。しかし、後に実額計算によれば税額が低くなることが判明したため、国税通則法23条1項1号に基づき、実額計算への変更を求める更正の請求をした。これに対し、税務署長(上告人)が更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったため、その取消しを求めて提訴した。
あてはめ
措置法26条1項は、実額計算に代えて概算による経費控除を認める特例であり、その適用を受けるかは納税者の自由な選択に委ねられている(同条3項)。被上告人は自ら同条の適用を選択して申告しており、その計算自体に法令違反や数計算の過誤はない。この場合、同条が適用される限り、実際の経費額が概算控除額を超えているか否かは問題とならないため、通則法23条1項1号の「計算が規定に従っていなかったこと」にも「誤りがあったこと」にも該当しない。期限までに収支決算を行えば有利不利の判断は可能であり、納税者に酷とはいえず、むしろ意思による税額の事後的な左右を認めるべきではない。
結論
更正の請求は認められず、本件処分は適法である。
実務上の射程
納税者の選択(有利選択)に係る事項については、原則として更正の請求の対象外であるとする確立した規範である。答案上は、通則法23条の「誤り」の意義を検討する際、単なる「主観的な選択の失敗」が含まれないことを説明するために引用する。
事件番号: 平成21(行ツ)73 / 裁判年月日: 平成23年9月22日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成21(行ツ)173 / 裁判年月日: 平成23年9月30日 / 結論: 棄却
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