通謀虚偽表示により遺産分割協議が成立した外形を作出し,これに基づいて相続税の申告を行った後,遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したという事実関係の下においては,当該判決の確定が国税通則法23条2項1号に該当することを理由として更正の請求をすることはできない。
相続税申告の基礎となった遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したことが国税通則法23条2項1号に該当することを理由として更正の請求をすることはできないとされた事例
国税通則法23条1項,国税通則法23条2項,民法94条,民法907条1項
判旨
通謀虚偽表示により仮装の遺産分割協議を行い、これに基づき相続税の申告をした者が、後に当該協議の無効が確定したとして国税通則法23条2項1号に基づく更正の請求を行うことは、当初の期間内に適正な申告をなし得たといえるため許されない。
問題の所在(論点)
自ら通謀虚偽表示によって虚偽の遺産分割協議を主導し、これに基づいて申告を行った者が、後に当該協議の無効が判決によって確定したことを理由として、国税通則法23条2項1号に基づく後発的更正の請求をすることができるか。同条1項の期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」が認められるかが問題となる。
規範
国税通則法23条2項1号に基づく後発的更正の請求が認められるためには、同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があることを要する。自ら虚偽の外形を作出した場合には、当初から真実の権利関係に基づいた申告を行うことが可能であったといえ、特段の事情がない限り、法定期間内に適正な申告・請求をしなかったことについて「やむを得ない理由」があるとは認められない。
重要事実
上告人は、相続税の配偶者軽減規定の適用を最大限受けるため、自らの主導の下、他の相続人らと通謀して仮装の遺産分割協議を成立させた。上告人はこの仮装の協議に基づき相続税の申告を行ったが、後に他の相続人から提起された訴訟において、当該協議が通謀虚偽表示により無効である旨の判決が確定した。これを受け、上告人は遺産が未分割状態にあるとして、法定相続分に基づく課税価格への後発的更正の請求(国税通則法23条2項1号)を求めた。
事件番号: 平成8(行ツ)54 / 裁判年月日: 平成11年6月10日 / 結論: 棄却
相続財産に属する特定の財産を計算の基礎としない相続税の期限内申告書が提出された場合において、納税者が当該財産が相続財産に属さないか又は属する可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出したときは、国税通則法六五条四項にいう「正当な理由」がある。
あてはめ
上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示によって遺産分割協議が成立したかのような外形をあえて作出したものである。上告人は当初から当該協議が虚偽であることを認識しており、法定申告期限内に真実の分割状態(または未分割状態)に基づいた適正な申告を行うことが十分に可能であったといえる。したがって、法定期間内に正しい申告や更正の請求を行わなかったことについて、客観的に正当化される「やむを得ない理由」があるとは到底いえない。
結論
上告人による更正の請求は、国税通則法23条2項1号の要件を満たさず許されない。したがって、本件更正をすべき理由がない旨の処分は適法である。
実務上の射程
納税者が自ら虚偽の事実を作出した場合に、後発的事情(無効判決の確定等)を奇貨として租税回避や税額の事後的調整を図ることを封じる射程を持つ。答案上は、同条項の「やむを得ない理由」の有無を判断する際、納税者の主観的意図や帰責性の有無を考慮する有力な根拠として活用できる。
事件番号: 昭和44(行ツ)22 / 裁判年月日: 昭和49年5月30日 / 結論: 棄却
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)一三条一項二号は、法人が合併した場合の清算所得中には、合併の場合に合併法人が納付する被合併法人の清算所得に対する法人税額、その法人税額に係る道府県民税額及び市町村民税額並びに清算所得に対する事業税額に相当する金額を含む趣旨を定めたものと解すべきである。
事件番号: 平成21(行ヒ)110 / 裁判年月日: 平成22年4月13日 / 結論: 破棄差戻
都市計画法55条1項所定の事業予定地内の土地の所有者が具体的に建築物を建築する意思を欠き,都道府県知事等による当該土地の買取りが外形的に同法56条1項の規定による買取りの形式を採ってされたにすぎない場合には,租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下同じ。)33条1項3号の3所定の「都市計画法第56…
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…