国税通則法六八条一項の重加算税を課し得るためには、納税者が申告に際し過少申告を行うことの認識を有していることは必要でない。
国税通則法六八条一項の重加算税の賦課と過少申告の認識の要否
国税通則法68条1項
判旨
国税通則法68条1項の重加算税を課すためには、納税者が事実を隠蔽・仮装し、それを原因として過少申告の結果が発生すれば足り、申告時に過少申告の認識を有していることまでを要しない。
問題の所在(論点)
国税通則法68条1項の重加算税の賦課要件として、隠蔽・仮装行為が存在することに加え、申告時において納税者に「過少申告を行うことの認識」があることまで必要か。
規範
重加算税は、納税義務違反が事実の隠蔽又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に課される行政上の措置であり、故意の納税義務違反に対する制裁ではない。したがって、重加算税を課し得るためには、納税者が故意に事実の全部又は一部を隠蔽・仮装し、その行為を原因として過少申告の結果が発生すれば足り、申告に際して過少申告を行うことの認識(過少申告の故意)までを有している必要はない。
重要事実
上告人(納税者)は、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽又は仮装した。その後、当該隠蔽・仮装行為を原因として、実際よりも少ない税額を申告するに至った。これに対し、税務当局が国税通則法68条1項に基づき重加算税の賦課決定処分を行ったところ、納税者側は、申告時において過少申告を行う認識がなかったとして、処分の違法を主張しその取消しを求めた。
事件番号: 昭和56(行ツ)139 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項による重加算税の賦課決定に対する審査請求において、同項所定の加重事由は認められないが、同法六五条所定の過少申告加算税の賦課要件の存在が認められる場合には、国税不服審判所長は、右賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができる。
あてはめ
本件において、上告人は適法に確定された事実関係によれば、課税標準等の計算の基礎となる事実について隠蔽又は仮装の行為を行っている。重加算税の本質は不正方法による違反への行政的措置であるから、かかる隠蔽・仮装行為がなされ、それによって過少申告という結果が生じた以上、賦課要件は充足される。納税者が申告時点で過少申告の主観的認識を欠いていたとしても、先行する隠蔽・仮装行為と過少申告の結果との間に因果関係がある限り、重加算税の課税を妨げるものではない。
結論
重加算税の賦課に過少申告の認識は不要であり、隠蔽・仮装行為に基づき過少申告の結果が生じた本件処分に違法はない。
実務上の射程
重加算税の「隠蔽・仮装」の意義を検討する際のリーディングケースである。答案上は、申告段階での故意を不要とする点で行政罰的性格を強調し、隠蔽・仮装行為そのものの故意(客観的態様とその主観)があれば足りると論じる際に活用する。ただし、隠蔽・仮装行為と申告結果との因果関係については、納税者側の主張に対する反論として考慮する必要がある。
事件番号: 平成17(行ヒ)9 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合,納税者において当該税理士が上記行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに上記行為が行われ,それに基づ…
事件番号: 平成5(行ツ)133 / 裁判年月日: 平成6年11月22日 / 結論: 破棄自判
金融業者が、正確な所得金額を把握しながら、三年間にわたり真実の所得金額の約三、四パーセントにすぎない額のみを所得金額として記載した白色申告による確定申告書を提出し、その後の税務調査に際しても、過少の店舗数や利息収入金額を記載した内容虚偽の資料を提出し、所得金額を少額ずつ増加した修正申告を繰り返した上、その後の最終修正申…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…