国税通則法六八条一項による重加算税の賦課決定に対する審査請求において、同項所定の加重事由は認められないが、同法六五条所定の過少申告加算税の賦課要件の存在が認められる場合には、国税不服審判所長は、右賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができる。
国税通則法六八条一項による重加算税の賦課決定に対する審査請求において同項所定の加重事由のみが認められない場合と右賦課決定の取消の範囲
国税通則法65条,国税通則法68条1項,国税通則法98条2項
判旨
重加算税の賦課決定は、その性質上、過少申告加算税の賦課に相当する部分を包含するため、重加算税の賦課決定に対する不服申立てにおいては、隠蔽・仮装という加重事由の存否のみならず、過少申告加算税の賦課要件(正当な理由の存否等)も審判の対象となる。
問題の所在(論点)
重加算税の賦課決定に対する審査請求において、隠蔽・仮装という加重事由のみならず、過少申告加算税の賦課要件(正当な理由の有無等)も審判の対象に含まれるか。また、主張がない場合に審査庁が判断を示さないことは違法か。
規範
重加算税(国税通則法68条1項)は、過少申告加算税(同法65条)の賦課要件を満たすことを前提に、隠蔽・仮装という「不正手段」を用いたとの特別の事由がある場合に課される重い制裁である。したがって、両者は別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき税額に加重額を加えた額の税を賦課する処分として、過少申告加算税相当部分をその中に含んでいる。これにより、重加算税に対する審査請求では、隠蔽・仮装の存否だけでなく、過少申告加算税の賦課要件(同法65条4項の「正当な理由」等)も当然に審判対象となる。
重要事実
納税者である上告人は、株式譲渡による所得を申告しなかったところ、税務署長から雑所得にあたると認定され、更正処分および重加算税の賦課決定を受けた。上告人は、重加算税の賦課決定に対して審査請求をしたが、その手続きにおいて過少申告加算税を免れるための「正当な理由」があることを主張しなかった。審査庁(国税不服審判所長)は「正当な理由」の有無について判断を示さなかったため、上告人は当該裁決が違法であると主張して争った。
事件番号: 昭和59(行ツ)302 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項の重加算税を課し得るためには、納税者が申告に際し過少申告を行うことの認識を有していることは必要でない。
あてはめ
重加算税の賦課決定は過少申告加算税相当部分を内包している。そのため、審査の結果、加重事由(隠蔽・仮装)は否定されるが過少申告加算税の要件は認められる場合には、加重額に相当する部分のみを取り消すべきであり、過少申告加算税の要件すら欠く場合には全部を取り消すべきことになる。もっとも、本件では審査請求人が「正当な理由」の存否について主張を行っておらず、審理の対象として提示されていない。審判対象に含まれ得る事項であっても、当事者の主張がない場合に審査庁が判断を示さなかったとしても、裁決に違法があるとはいえない。
結論
重加算税の賦課決定に対する審査請求において過少申告加算税の賦課要件も審判の対象となるが、当事者の主張がない限り、審査庁がこれに判断を示さなくても裁決は違法ではない。
実務上の射程
重加算税の取消訴訟において、予備的に「仮に隠蔽・仮装が認められないとしても、少なくとも過少申告加算税を免れる『正当な理由』がある」といった主張を構成する際の理論的根拠となる。重加算税の処分の中に過少申告加算税相当部分が「吸い込まれている」という構造を理解する上で重要である。
事件番号: 平成5(行ツ)133 / 裁判年月日: 平成6年11月22日 / 結論: 破棄自判
金融業者が、正確な所得金額を把握しながら、三年間にわたり真実の所得金額の約三、四パーセントにすぎない額のみを所得金額として記載した白色申告による確定申告書を提出し、その後の税務調査に際しても、過少の店舗数や利息収入金額を記載した内容虚偽の資料を提出し、所得金額を少額ずつ増加した修正申告を繰り返した上、その後の最終修正申…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…