金融業者が、正確な所得金額を把握しながら、三年間にわたり真実の所得金額の約三、四パーセントにすぎない額のみを所得金額として記載した白色申告による確定申告書を提出し、その後の税務調査に際しても、過少の店舗数や利息収入金額を記載した内容虚偽の資料を提出し、所得金額を少額ずつ増加した修正申告を繰り返した上、その後の最終修正申告で初めて所得金額を飛躍的に増加した申告をするに至ったなど判示の事実関係の下においては、会計帳簿に不実の記載はないとしても、右各確定申告は、重加算税の賦課要件を定めた国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの)六八条一項所定の場合に当たる。
会計帳簿に不実の記載はないとしても所得金額の大部分を脱漏した確定申告書又は修正申告書が数回にわたり提出されていることなどにより国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの)六八条一項所定の重加算税の賦課要件が満たされるとされた事例
国税通則法(昭和59年法律第5号による改正前のもの)68条1項
判旨
正確な所得を把握しながら、真実の所得を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、事後的な具体的工作も予定しつつ、所得金額の大部分を殊更過少に記載して申告する行為は、国税通則法68条1項の「隠ぺい」に該当する。
問題の所在(論点)
納税者が正確な所得金額を把握し得る帳簿類を作成していながら、あえて著しく過少な申告を行い、調査に際して虚偽資料を提出したような場合に、国税通則法68条1項の重加算税の要件である「隠ぺい」に該当するか。
規範
国税通則法68条1項にいう「隠ぺい」とは、課税標準等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠すことをいう。単なる過少申告では足りないが、納税者が真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じて事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことを予定しつつ、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した場合には、これに該当する。
重要事実
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…
サラリーマン金融業を営む亡Dは、正確な会計帳簿を作成して所得を把握していた。しかし、3年間にわたり、最終的な確定額のわずか3〜4%(差額合計約34億円)のみを確定申告した。さらに、税務調査に際しても、真実より少ない店舗数や過少な利息収入を記載した虚偽の資料を提出し、調査官の修正慫慂に対しても、求められた範囲を超えることなく大幅に過少な修正申告を繰り返した。
あてはめ
Dは、正確な帳簿により事業規模を把握しながら、3年間にわたり極めてわずかな所得のみを作為的に記載した申告書を提出し続けた。さらに調査時には過少な店舗数等を記載した虚偽資料を提出しており、真実の所得を隠ぺいする態度を貫こうとしている。これは、白色申告で調査解明が困難な状況を利用し、確定的な隠ぺいの意図の下に、事後的具体的工作を予定して、所得の大部分を殊更過少に記載したといえる。単なる認識を超えた「隠ぺい」行為と評価される。
結論
Dの行為は国税通則法68条1項にいう隠ぺいに該当し、重加算税の賦課決定は適法である。
実務上の射程
重加算税の「隠ぺい・仮装」の意義を判断する重要判例。納税者の「確定的な意図」や「事後の工作の予定」といった主観的要素を、申告額と真実の著しい乖離や調査時の不誠実な対応といった客観的事実から推認する手法を示しており、答案上もこれらの事実を拾ってあてはめるべきである。
事件番号: 昭和56(行ツ)139 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項による重加算税の賦課決定に対する審査請求において、同項所定の加重事由は認められないが、同法六五条所定の過少申告加算税の賦課要件の存在が認められる場合には、国税不服審判所長は、右賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができる。
事件番号: 昭和59(行ツ)302 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項の重加算税を課し得るためには、納税者が申告に際し過少申告を行うことの認識を有していることは必要でない。
事件番号: 平成17(行ヒ)9 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合,納税者において当該税理士が上記行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに上記行為が行われ,それに基づ…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…