1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合,納税者において当該税理士が上記行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに上記行為が行われ,それに基づいて過少申告がされたときには,上記行為を納税者本人の行為と同視することができ,重加算税を賦課することができるが,当該税理士の選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけでは足りない。 2 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず,上記申告後も同税理士による上記行為を認識した事実もなく,容易に認識し得たともいえないという事情の下では,納税者に,税務署職員等から示された税額よりも相当低い税額で済むとの同税理士の言葉を信じ,確定申告書の内容を確認しなかったなどの落ち度があるとしても,同税理士の上記行為を納税者本人の行為と同視することはできず,国税通則法68条1項所定の重加算税賦課の要件を満たすものということはできない。 3 国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいう。 4 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で虚偽の記載をした確定申告書を提出するなどして過少申告をした場合において,税務署職員等から示された税額よりも相当低い税額で済むとの同税理士の言葉を信じてそれ以上の調査確認をせず,確定申告書の内容を確認しなかったなど,納税者本人に落ち度があり,他方,上記確定申告書を受理した税務署職員が同税理士による脱税行為に加担した事実は認められないなど判示の事情の下では,納税者本人に対する過少申告加算税の賦課に関し,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできない。
1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい仮装行為をした場合と納税者本人に対する重加算税の賦課 2 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい仮装行為に基づく過少申告をした場合に納税者本人につき国税通則法68条1項所定の重加算税賦課の要件を満たすものということはできないとされた事例 3 国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合 4 納税申告手続を委任された税理士が虚偽の記載をした確定申告書を提出するなどして過少申告をした場合に納税者本人に対する過少申告加算税の賦課に関し国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとされた事例
(1,2につき)国税通則法68条1項,税理士法1条,(3,4につき)国税通則法65条4項
判旨
重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装」は、納税者本人が直接行わず第三者に委託した場合でも、納税者の関与や帰責性が認められれば納税者本人の行為と同視される。また、過少申告加算税を免れる「正当な理由」は、税務当局の指導の欠如や信頼した代理人の不正のみでは原則として認められない。
問題の所在(論点)
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
1. 納税者本人が不正を認識していない場合でも、代理人の行った隠ぺい・仮装行為に基づき重加算税を課すことができるか(重加算税の帰責範囲)。 2. 代理人の不正により過少申告となった場合、納税者に「正当な理由」が認められるか。
規範
1. 重加算税(国税通則法68条)の「隠ぺい又は仮装」とは、納税者が事実を隠匿し、あるいは虚偽の事実を殊更に作為することを指し、代理人がこれを行った場合でも、納税者自身の行為と同視し得る場合には賦課の対象となる。 2. 過少申告加算税(同法65条4項)の「正当な理由」とは、真に納税者の責めに帰すべきでない客観的な事情がある場合を指し、単なる法令の不知や代理人への過失ある委託はこれに当たらない。
重要事実
納税者Xは、土地譲渡に伴う申告を税理士丙に依頼したが、丙はXから預かった納税資金の一部を着服し、所得を過少に記載した虚偽の申告書を作成・提出した。Xは丙から具体的な申告内容の説明を受けず、また税務署からの申告内容に関する「お尋ね」に対しても、内容を確認せず丙に言わせるまま回答し、その結果、過少申告となった。税務当局は重加算税等の賦課決定を行ったが、Xは丙の独断であるとしてその取り消しを求めた。
あてはめ
1. Xは高齢であり税理士に事務を全面的に依存していたが、多額の譲渡所得が生じることを認識しながら、申告書の内容を確認せず、税務署への回答も丙に丸投げしていた。このような状況下では、代理人の不正行為を納税者自身の行為と同視することが可能であり、重加算税の要件を満たす。 2. 税務申告は納税者の責任において行われるべきものであり、信頼した代理人が不正を行ったことや、税務署が事前に適切な指導を行わなかったことは、客観的な「正当な理由」には該当しない。
結論
本件における過少申告には重加算税の賦課要件である隠ぺい・仮装が認められ、また納税者に「正当な理由」があるとはいえないため、賦課決定処分は適法である。
実務上の射程
納税者が代理人の選任・監督を怠り、内容を確認せずに申告を放置した場合には、代理人の不正が納税者本人に帰せられることを示した。実務上、納税者の「無知」や「丸投げ」は重加算税を回避する抗弁として極めて限定的にしか機能しないことを留意すべきである。
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…
事件番号: 昭和59(行ツ)302 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項の重加算税を課し得るためには、納税者が申告に際し過少申告を行うことの認識を有していることは必要でない。
事件番号: 平成11(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成16年7月20日 / 結論: 破棄自判
法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして…
事件番号: 平成14(行ヒ)103 / 裁判年月日: 平成17年1月17日 / 結論: 破棄差戻
1 国税通則法70条5項は,国税の納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用される。 2 納税者が,土地の譲渡所得を得た年分の所得税の申告を委任した税理士から,委任に先立ち,実際に出費していない土地の買手の紹介料等が経費として記載されたメモを示さ…