1 国税通則法70条5項は,国税の納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用される。 2 納税者が,土地の譲渡所得を得た年分の所得税の申告を委任した税理士から,委任に先立ち,実際に出費していない土地の買手の紹介料等が経費として記載されたメモを示され,多額の税額を減少させて得をすることができる旨の説明を受けた上で,同税理士に上記の申告を委任したものであり,同税理士が架空経費の計上などの違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたとみることができるなど判示の事情の下においては,税理士に申告を委任する者は法律に違反しない方法と範囲で必要最小限の税負担となるように節税することを期待して委任するのが一般的であることなどを理由として,上記納税者が脱税を意図し,その意図に基づいて行動したとは認められないとした原審の認定には,経験則に違反する違法がある。 (2につき補足意見がある。)
1 国税の納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い納税者が税額の全部又は一部を免れた場合における国税通則法70条5項の適用の有無 2 税理士に所得税の申告を委任した納税者が脱税を意図しその意図に基づいて行動したとは認められないとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例
国税通則法68条1項,国税通則法70条5項,民訴法247条,税理士法1条
判旨
国税通則法70条5項の「偽りその他不正の行為」には、納税者本人だけでなく受任者が行った場合も含まれる。また、納税者が受任者の違法な手段を了知し容認していたと推認される場合には、両者の間に隠ぺい・仮装の意思の連絡があったものとして重加算税の賦課要件を充足する。
問題の所在(論点)
1. 納税者本人ではなく受任者が不正を行った場合に、更正等の除斥期間を延長する国税通則法70条5項が適用されるか。2. 納税者本人が直接不正を行っていない場合でも、受任者との意思の連絡があれば重加算税(同法68条1項)を課し得るか。
規範
1. 国税通則法70条5項の「偽りその他不正の行為」は、納税者本人に限らず、申告の委任を受けた者がこれを行い、納税者が税額を免れた場合にも適用される。2. 同法68条1項の重加算税の要件(隠ぺい・仮装)については、納税者が受任者の違法な企図を了知した上で委任・資金交付をした場合、特段の事情がない限り隠ぺい・仮装の容認が推認され、両者の間に「意思の連絡」が認められるときは同条の要件を充足する。
事件番号: 平成17(行ヒ)9 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合,納税者において当該税理士が上記行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに上記行為が行われ,それに基づ…
重要事実
大学教授である被上告人は、土地売却に伴う譲渡所得の申告を甲税理士に委任した。甲は架空経費(紹介料)を含むメモを示し「税額を大幅に減らせる」と説明。被上告人は紹介料の出費がないことを知りながら、疑念を抱きつつも委任を継続し、報酬と納税資金を交付した。甲は課税資料を廃棄させる等の不正を行い、資金を領得して虚偽の過少申告を行った。後に脱税が発覚し、当局は除斥期間経過後に重加算税等の賦課決定を行った。
あてはめ
1. 同法70条5項の文理・立法趣旨から、受任者の不正により税額を免れた場合も含まれると解するのが相当である。2. 被上告人は、架空経費の計上等、甲の違法な手段を了知しながら委任し、多額の資金を交付している。単に税理士の公的使命を信頼していたという抽象的事情のみでは、不正行為の容認という推認を覆す特段の事情には当たらない。したがって、甲が不正を働くことについて被上告人が容認し、両者に意思の連絡があったとみる余地がある。
結論
更正等の除斥期間については同法70条5項が適用され、本件処分は期間内になされたものといえる。重加算税については、受任者との意思の連絡の有無を更に審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
納税者本人が「お任せしていた」と弁解しても、不自然な節税スキームや架空経費の提案を了知・黙認していた事実は「意思の連絡」の有力な推認根拠となる。税務訴訟において、税理士による不正を理由とする重加算税回避の主張を制限する強力な基準である。
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…
事件番号: 平成17(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成18年10月24日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 昭和59(行ツ)302 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
国税通則法六八条一項の重加算税を課し得るためには、納税者が申告に際し過少申告を行うことの認識を有していることは必要でない。