不動産が譲渡担保の目的とされ、設定者甲から譲渡担保権者乙への所有権移転登記が経由された場合において、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に乙から目的不動産を譲り受けた丙は、民法一七七条にいう第三者に当たる。
譲渡担保権者から譲渡担保権消滅後に目的不動産を譲り受けた者と民法一七七条の第三者
民法177条,民法369条(譲渡担保)
判旨
不動産譲渡担保において、被担保債務の弁済により担保権が消滅した後に、譲渡担保権者が目的物を第三者に譲渡した場合、設定者と第三者は対抗関係に立つ。したがって、第三者が背信的悪意者に当たらない限り、設定者は登記がなければ所有権の復帰を第三者に対抗できない。
問題の所在(論点)
譲渡担保権が消滅した後に、譲渡担保権者が目的物を第三者に処分した場合、設定者は自己への所有権の復帰を登記なくして当該第三者に対抗できるか。換言すれば、弁済による譲渡担保消滅後の譲渡は民法177条の対抗関係を生じるか。
規範
譲渡担保設定者から譲渡担保権者へ所有権移転登記が経由されている場合において、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に、目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは、設定者と第三者は二重譲渡と同様の対抗関係(民法177条)に立つ。したがって、第三者がいわゆる背信的悪意者に当たらない限り、設定者は、登記がなければその所有権を第三者に対抗することができない。
重要事実
設定者(亡Dの相続人ら及びA3製作所)は、不動産をEに譲渡担保に供し、所有権移転登記を経由していた。その後、被担保債務の弁済等により譲渡担保権は消滅したが、登記はEに残ったままであった。譲渡担保権消滅後、Eは目的不動産を第三者Bに譲渡した。設定者らはBに対し、債務弁済による所有権の復帰を主張して、その所有権を争った。
事件番号: 昭和53(オ)1213 / 裁判年月日: 昭和55年9月11日 / 結論: その他
一 甲と乙との通謀により甲から乙に対し抵当権を設定したものと仮装した抵当権設定登記が経由されたのち、乙が善意の丙に対し転抵当権を設定し、丙を権利者とする転抵当権設定登記が経由された場合において、丙は、いまだ民法三七六条所定の対抗要件を具備しないときであつても、原抵当権の設定の無効を理由とする原抵当権設定登記の抹消につい…
あてはめ
本件において、設定者側は債務の弁済等により譲渡担保権が消滅したと主張している。この消滅後の第三者Bへの譲渡は、登記名義を有するEを起点とする一種の二重譲渡的状況を現出させる。判旨によれば、Bが背信的悪意者に該当するといった特段の事情がない限り、Bは民法177条の「第三者」に含まれる。したがって、登記を備えていない設定者らは、有効に権利を取得したBに対して、所有権の復帰を主張できないこととなる。
結論
設定者は、登記がない限り、譲渡担保権消滅後に目的不動産を譲り受けた第三者に対して所有権を対抗できない。
実務上の射程
本判決は、譲渡担保消滅後の第三者取得を、物権変動の一般原則である民法177条の枠組みで処理することを明示したものである。答案作成上は、譲渡担保の法的性質(所有権移転説等)に関わらず、消滅後の処分については対抗関係の問題として構成すべきであり、解除後の第三者(94条2項類推適用または177条)と同様の論理構造で記述する際に有用である。
事件番号: 昭和57(オ)111 / 裁判年月日: 昭和57年6月4日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより該不動産の所有権移転の効果が生ずる。
事件番号: 昭和49(オ)762 / 裁判年月日: 昭和49年12月17日 / 結論: 棄却
譲渡担保の被担保債権につき、その弁済期の頃、債権者、債務者、目的物件所有者の間において、右物件を処分し、その売却代金によつてこれを弁済する旨の合意が成立した場合においては、右処分未了の間、債務者は債務を弁済して譲渡担保権を消滅させることができる。
事件番号: 昭和54(オ)801 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
被相続人の生存中に権限なくして不動産を第三者に譲渡した共同相続人が遺産分割の結果当該不動産を取得しないこととなつた場合については、民法九〇九条但書の適用がなく、第三者は右共同相続人の法定相続分に応じた共有持分権を取得しない。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。