被相続人の生存中に権限なくして不動産を第三者に譲渡した共同相続人が遺産分割の結果当該不動産を取得しないこととなつた場合については、民法九〇九条但書の適用がなく、第三者は右共同相続人の法定相続分に応じた共有持分権を取得しない。
遺産分割の結果当該不動産を取得しないこととなつた共同相続人による被相続人生存中の不動産譲渡行為と民法九〇九条但書の適用の有無
民法909条
判旨
民法909条ただし書の「第三者」とは、相続開始後かつ遺産分割の成立前に、共同相続人の共有持分について権利を取得した者を指し、遺産分割の遡及効により権利を害されるのを防ぐ趣旨である。
問題の所在(論点)
遺産分割の遡及効(民法909条本文)を制限し、保護される「第三者」(同条ただし書)の範囲と、共同相続人の共有持分を取得したと主張する者の保護の可否が問題となった。
規範
民法909条本文は遺産分割の効力が相続開始の時に遡る旨を規定するが、同条ただし書は「第三者の権利を害することはできない」とする。この「第三者」とは、相続開始後から遺産分割が成立するまでの間に、共同相続人の共有持分について権利を取得した者を指す。
重要事実
本件建物の共同相続人の一人である訴外Dの法定相続分に応じた共有持分権について、上告人が権利を取得したと主張した事案である。しかし、原審の確定した事実関係によれば、上告人が当該共有持分権を適法に取得した事実は認められなかった(判決文からは具体的な取引経緯の詳細は不明)。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。
あてはめ
民法909条ただし書の趣旨は、相続開始後、遺産分割までの間に、共同相続人の共有持分について権利を取得すべき第三者を保護することにある。本件において、上告人はDの法定相続分に応じた持分権を取得したと主張するが、原審においてその権利取得の事実は否定されている。したがって、上告人は同条ただし書により保護されるべき「権利を取得した第三者」に該当しないと解される。
結論
上告人は本件建物につきDの法定相続分に応じた共有持分権を取得したものとはいえず、民法909条ただし書の第三者として保護されない。
実務上の射程
遺産分割前の第三者の保護については、民法909条ただし書が適用され、登記等の対抗要件を備えることが必要とされる(通説・判例)。これに対し、分割後の第三者については、民法899条の2第1項により、法定相続分を超える部分について登記がなければ対抗できないと整理されるため、本判例の射程は「分割前」の取引に限定される。
事件番号: 昭和34(オ)723 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。 第1 事案の概要:D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記…
事件番号: 昭和42(オ)524 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 棄却
部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第九四条第二項の適用または類推適用がない。