死亡退職金の支給規程のない財団法人において理事長の死亡後同人に対する死亡退職金として支給する旨の決定をし同人の妻に支払われた金員は、特段の事情のない限り、相続財産に属するものではなく、妻個人に属するものと認めるべきものとした原審の認定判断は相当である。
死亡退職金の支給規程のない財団法人が死亡した理事長の妻に支給した死亡退職金が相続財産に属さず妻個人に属するものとされた事例
民法896条
判旨
退職金支給規程等が存在しない状況で、法人が死亡した理事長の配偶者に対して支給を決定した死亡退職金は、相続財産ではなく、受給者個人の固有財産に帰属する。
問題の所在(論点)
死亡退職金支給規程が存在しない場合に、法人が特定の遺族に対して支給を決定した死亡退職金は、被相続人の相続財産に含まれるか、それとも遺族の固有財産となるか。
規範
死亡退職金の帰属については、支給規程等の有無やその内容、支給の経緯及び目的を総合的に考慮して判断すべきである。規程が存在せず、特定の遺族に対して支給する旨の決定がなされた場合には、当該給付は相続という関係を離れて遺族個人の固有財産として支給されたものと解するのが相当である。
重要事実
財団法人Eの理事長Dが死亡した当時、Eには退職金支給規程や死亡功労金支給規程が存在しなかった。しかし、EはDの死亡後、死亡退職金として2000万円を支給する旨を決定し、Dの妻である被上告人にこれを支払った。これに対し、Dの子である上告人らが、当該退職金は相続財産に属すると主張して、被上告人に対して分け前を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、Dの勤務先であった法人Eには死亡退職金に関する規程が一切存在していなかった。そのため、当該退職金は当然に発生する権利ではなく、Eの裁量による新たな支給決定によって生じたものである。EはDの死亡後、その配偶者である被上告人個人に対して支払う旨を決定していることから、これは相続人代表者としての受領を予定したものではなく、被上告人の生活保障等の意図を含んだ固有の給付であると評価される。したがって、相続財産としての性質は認められない。
結論
本件死亡退職金は、相続という関係を離れて被上告人個人に対して支給されたものであり、相続財産には当たらない。
実務上の射程
本判決は、規程がない場合の死亡退職金の帰属を判断したものである。実務上、規程がある場合はその受給権者決定の定めに従う(通常は遺族の固有財産とされる)が、規程がない場合であっても、支給決定の態様によって「遺族の固有財産」性を認めることができる点に射程が及ぶ。答案上は、相続財産の範囲を画定する際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和58(オ)114 / 裁判年月日: 昭和58年10月14日 / 結論: 棄却
死亡退職金の支給等を定めた滋賀県学校職員退職手当支給条例の規定に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは他の遺族は全く支給を受けないこと、当該職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していたか否かにより受給の順位に差異を生ずることなど、受給権者の範囲及び順位に…