死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど、受給権者の範囲、順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合には、右死亡退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利である。
死亡退職金の受給権が相続財産に属さず受給権者である遺族固有の権利であるとされた事例
労働基準法23条,民法896条
判旨
死亡退職金の受給権者につき、民法の相続とは異なる独自の順位等を定めた退職手当規程がある場合、当該退職金は遺族の固有の権利であり、相続財産には属さない。
問題の所在(論点)
死亡退職金の受給権が、民法の相続財産として相続の対象となるのか、あるいは遺族の固有の権利として相続財産から除外されるのかが問題となる。
規範
退職手当規程が、民法の規定する相続人の順位決定の原則と著しく異なる定めをしている場合、当該規程は専ら遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたものと解される。この場合、受給権者は相続人としてではなく、規程に基づき直接「自己固有の権利」として取得するため、当該受給権は相続財産に含まれない。
重要事実
被上告人(勤務先)の職員退職手当規程において、死亡退職金の第一順位を内縁を含む配偶者とし、配偶者がいれば子は受給できないとするほか、親等の近い父母を孫に優先させ、生計維持の有無で順位に差を設けるなど、民法の相続財産制度とは著しく異なる順位及び範囲が定められていた。
あてはめ
本件規程では、配偶者が優先され子が排除される点や、生計維持関係を重視する点など、相続法上の順位と大きく乖離している。これは、職員の収入に依拠していた遺族の生活保障という独自の目的を有するものといえる。したがって、規程によって定められた受給権者は、被相続人の権利を承継するのではなく、直接自己の権利として取得したと評価される。よって、受給権者が存在しない場合に他の相続人が相続財産として承継することもない。
結論
本件死亡退職金の受給権は相続財産に属さない。したがって、規程上の受給権者ではない者が、相続を理由に当該権利を主張することはできない。
実務上の射程
死亡退職金の相続財産性を判断する際のリーディングケースである。規程が存在しない場合や、単に「相続人に支払う」とある場合には本判決の射程は及ばず、相続財産性が認められうる点に注意が必要である。答案では、規程の「生活保障目的」の有無を順位の特殊性から論証する際に引用する。
事件番号: 昭和59(オ)504 / 裁判年月日: 昭和62年3月3日 / 結論: 棄却
死亡退職金の支給規程のない財団法人において理事長の死亡後同人に対する死亡退職金として支給する旨の決定をし同人の妻に支払われた金員は、特段の事情のない限り、相続財産に属するものではなく、妻個人に属するものと認めるべきものとした原審の認定判断は相当である。