賃金に該当する退職金の請求権は、労働基準法一一五条に基づき二年間これを行使しないことにより時効消滅する。
賃金に該当する退職金の請求権の消滅時効
労働基準法115条
判旨
退職金は、労働基準法11条に定める「労働の対償」としての賃金に該当し、その請求権の消滅時効期間は、同法115条(当時)に基づき2年間(現在は附則143条3項により5年、当分は3年)と解される。
問題の所在(論点)
就業規則等に基づき支給される退職金が労働基準法11条の「賃金」に該当するか。また、その請求権の消滅時効期間は同法115条によって定まるか。
規範
労働基準法11条の「賃金」とは、名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。そして、退職金であっても、あらかじめ支給条件が明確化されており、使用者に支払義務があるものは「労働の対償」としての性質を有し、同法上の賃金に該当する。賃金請求権の消滅時効については、同法115条が適用される。
重要事実
上告人(労働者)が、退職金の支払を求めて訴えを提起した事案。原審(東京高裁昭和43年2月29日判決)は、本件退職金が労働基準法11条の賃金に該当することを前提に、同法115条所定の2年の消滅時効が完成していると判断した。これに対し、上告人が退職金の賃金該当性および時効期間の解釈を争い、上告した。
あてはめ
本件退職金は、使用者が労働の対償として支払うべき性質を有するものである。したがって、労働基準法11条にいう「労働の対償」としての賃金に該当すると判断される。賃金に該当する以上、その請求権の行使については、一般民事債権の時効規定ではなく、労働基準法115条(当時の規定)が優先的に適用される。上告人は2年間これを行使しなかったため、時効により消滅したと評価される。
結論
本件退職金は労働基準法11条の賃金に該当し、同法115条により2年(当時)の経過をもって時効消滅する。本件上告は棄却される。
実務上の射程
退職金が労働基準法上の賃金に含まれることを明示した重要判例である。答案上は、退職金の法的性質が問題となる場面(賃金全額払原則の適用や時効など)で、本判決を根拠に「支給条件が明確な退職金は労基法上の賃金にあたる」と認定する。なお、現在の労働基準法下では、退職手当の時効期間は5年(当分の間は3年)である点に注意を要する。
事件番号: 昭和40(オ)527 / 裁判年月日: 昭和43年3月12日 / 結論: 棄却
一、国家公務員等退職手当法に基づいて支給される一般の退職手当は、労働基準法第一一条所定の賃金に該当し、その支払については、性質の許すかぎり、同法第二四条第一項本文の規定が適用または準用される。 二、右退職手当の支給前に、退職者またはその予定者が退職手当の受給権を他に譲渡した場合において、譲受人が直接国または公社に対して…