一、国家公務員等退職手当法に基づいて支給される一般の退職手当は、労働基準法第一一条所定の賃金に該当し、その支払については、性質の許すかぎり、同法第二四条第一項本文の規定が適用または準用される。 二、右退職手当の支給前に、退職者またはその予定者が退職手当の受給権を他に譲渡した場合において、譲受人が直接国または公社に対してその支払を求めることは許されない。
一、国家公務員等退職手当法に基づく退職手当の支払と労働基準法第二二四条一項の適用または準用の有無 二、右退職手当の受給権を譲り受けた者が国または公社に対し直接支払を求めることの許否
国家公務員等退職手当法2条,労働基準法11条,労働基準法24条1項,労働基準法120条,民法466条
判旨
国家公務員等退職手当法に基づく退職手当は、労働基準法11条の賃金に該当し、同法24条1項の直接払の原則が適用されるため、権利の譲受人は国等に対して直接その支払を求めることはできない。
問題の所在(論点)
国家公務員等退職手当法に基づく退職手当が労働基準法上の賃金に該当するか。また、賃金債権が適法に譲渡された場合、譲受人は使用者に対して直接その支払を請求できるか。労働基準法24条1項の直接払の原則の解釈が問題となる。
規範
労働基準法24条1項が定める賃金の直接払の原則は、使用者の支払義務に罰則を付して履行を強制する趣旨である。したがって、賃金債権が譲渡された場合であっても、使用者は労働者に対して直接賃金を支払う義務を負い、債権の譲受人が使用者に対して直接その支払を請求することは許されない。また、退職手当であっても、支給条件が法定され裁量の余地がないものは「労働の対償」たる賃金(同法11条)に該当し、右原則の適用ないし準用を受ける。
重要事実
訴外Dは、日本電信電話公社(被上告人)の職員として勤務していたが、退職前に自身の有する退職手当の受給権を上告人に対して譲渡した。その後、Dが退職したため、譲受人である上告人が、被上告人である公社に対し、譲り受けた退職手当の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件退職手当は、国家公務員等退職手当法に基づき支給条件が法定されており、欠格事由がない限り一律に支給されるべきものである。したがって「労働の対償」たる賃金に該当し、労基法24条1項の適用を受ける。同条の直接払の原則によれば、たとえ退職手当の譲渡自体が有効であっても、公社は依然として退職者本人に対して直接支払う義務を負う。この結果、譲受人である上告人は、債務者である公社に対して直接支払を求める法的権限を有しないといえる。
結論
上告人の請求は認められない。賃金債権の譲渡は可能であるが、直接払の原則により譲受人からの直接請求は拒絶される。
実務上の射程
賃金債権譲渡の有効性と、直接払の原則の関係を明確にしたリーディングケースである。答案上は、債権譲渡の有効性を認めつつも、24条1項の趣旨に基づき、譲受人の直接請求権を否定する二段構えの論理構成として用いる。
事件番号: 昭和49(オ)715 / 裁判年月日: 昭和49年11月8日 / 結論: 棄却
賃金に該当する退職金の請求権は、労働基準法一一五条に基づき二年間これを行使しないことにより時効消滅する。
事件番号: 平成26(オ)77 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: 破棄自判
退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを政令に委任する国家公務員共済組合法(平成24年法律第63号による改正前のもの)附則12条の12第4項及び同条の経過措置を定める厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成8年法律第82号)附則30条1項は,憲法41条及び73条6号に違反しない。