会社とその従業員をもつて組織する労働組合との間に成立した退職金に関する協約上の約定は商行為であつて、右約定に基く退職金債権はこれを商事債権と認むべきである。
会社、労働組合間の退職金支給に関する協約と商行為
商法503条,商法514条
判旨
商事会社が従業員との労働組合間で締結した退職金支払の約定は、商法503条に基づき商行為と解される。したがって、当該約定に基づく退職金債務の不履行による遅延損害金には、商事法定利率が適用される。
問題の所在(論点)
商事会社が従業員との間で締結した退職金支払に関する約定が、商法503条にいう商行為に該当するか。また、その遅延損害金に商事法定利率が適用されるか。
規範
商人がその営業のためにする行為は商行為(附属的商行為)と推定される(商法503条1項、2項)。商行為によって生じた債務の不履行に基づく遅延損害金については、別段の合意がない限り、商事法定利率(旧商法514条所定の年6分)が適用される。
重要事実
上告会社は、バスやトラックの車体製作およびバス運転の請負を業とする商事会社である。昭和23年、上告会社と従業員が所属する労働組合との間で「退職金については工員にも社員規定を適用する」旨の労働協約が成立し、全従業員に退職金を支払う約定がなされた。その後、被上告人らが当該約定に基づく退職金および商事法定利率に基づく遅延損害金の支払を求めた事案である。
あてはめ
上告会社はバス製作等を業とする商事会社である。このような営利を目的とする商人が、その事業を継続・維持するために欠かせない労働力を確保すべく、従業員との間で退職金支払を約定する行為は、特段の事情がない限り「営業のためにする行為」にあたると解される。本件の退職金に関する約定も、商法503条に基づき商行為と解するのが相当である。したがって、当該債務の不履行によって生じた遅延損害金には、商法所定の年6分の利率が適用されるべきである。
結論
本件退職金債権は商行為によって生じたものであるから、年6分の商事法定利率による遅延損害金の請求を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
労働債権であっても、債務者が商事会社である場合には商法503条の附属的商行為性が認められ、商事法定利率(改正前商法514条。現在は民法等の一部改正により法定利率は民法に一本化されているが、本判例の論理は附属的商行為の判定として重要)が適用されることを示した。
事件番号: 昭和49(オ)715 / 裁判年月日: 昭和49年11月8日 / 結論: 棄却
賃金に該当する退職金の請求権は、労働基準法一一五条に基づき二年間これを行使しないことにより時効消滅する。
事件番号: 昭和60(オ)728 / 裁判年月日: 平成元年9月7日 / 結論: その他
就業規則に退職金は支給時の退職金協定によると定められている場合、右就業規則を補充するものとして所轄労働基準監督署長に届け出られた退職金協定の支給基準は、就業規則の一部となつているものであつて、退職金協定が有効期間の満了により失効しても当然には効力を失わず、退職金協定の失効後に退職し適用すべき協定のない労働者については、…