国税犯則取締法一四条一項による通告は、証拠資料が相当な調査に基づいて収集されたものであり、これらの証拠資料を総合勘案して、通告時に犯則の心証を得たことにつき合理性があると認められる場合には、のちに通告に係る犯則事実が存在しないものと判断されたとしても、無効とされるものではない。
国税犯則取締法一四条一項による通告に係る犯則事実が存在しない場合における右通告の効力
国税犯則取締法14条1項
判旨
国税犯則取締法に基づく通告処分は、相当な調査に基づき収集された証拠資料を総合勘案し、通告時に犯則の心証を得たことに合理性がある場合には、後に一部の犯則事実が否定されても違法・無効とはならない。
問題の所在(論点)
国税犯則取締法14条に基づく通告処分において、処分の根拠となった犯則事実の一部が後に否定された場合、当該処分は遡及的に違法・無効となり、納付金の返還義務が生じるか。通告処分の適法性判断の基準が問題となる。
規範
国税犯則取締法(現・国税通則法)に基づく通告処分が適法であるためには、①証拠資料が相当な調査に基づいて収集されたものであり、②それらの証拠資料を総合勘案して、通告時に犯則の心証を得たことにつき合理性があると認められることが必要である。この要件を満たす限り、事後的に通告に係る犯則事実の一部が存在しないものと判断されたとしても、当該処分が直ちに違法・無効となるものではない。
重要事実
上告人らは関東信越国税局長から、一定の犯則事実に基づき罰金相当額等の納付を命じる通告処分を受けた。上告人らはこれに従い納付したが、後に当該犯則事実の一部が実際には存在しなかったことが判明したため、当該通告処分は無効であり、納付した金額は法律上の原因を欠く不当利得であるとしてその返還を求めた。
あてはめ
本件では、国税局長が行った通告は、相当な調査により収集された証拠に基づき、当時の状況下で合理的な心証をもってなされたものと認められる。仮に一部の犯則事実が不存在であったとしても、その余の存立する犯則事実に対する処断刑(罰金額の範囲)において、当初通告した罰金相当額を定めることは可能であり、局長の裁量の範囲内にとどまる。したがって、事後の事実認定の変化によって、通告時の合理的な判断が覆されるものではなく、法律上の原因を欠くことにはならない。
結論
通告処分は適法であり、一部の事実が否定されたとしても無効とはならない。したがって、納付された金額について不当利得返還請求は認められない。
実務上の射程
行政処分の適法性を「処分時」の事情と合理性で判断する枠組みを示しており、国家賠償請求や不当利得返還請求における処分の違法性判断に活用できる。特に、事後的な事実認定の変遷が当然に処分の効力に影響しないとする点で、行政の判断に一定の合理的な裁量を認める際の論拠となる。
事件番号: 昭和26(オ)852 / 裁判年月日: 昭和28年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察官による捜査手続が、形式的に適法であるのみならず、実質的にも違法の点がないと認められる場合には、国家賠償法上の違法性は認められない。 第1 事案の概要:国家地方警察長野県上水内地区警察署員らが、窃盗被疑事件につき上告人らに対して捜査手続を行った。上告人らは、当該捜査手続には実質的な違法があり、…