書証の内容と当事者双方の事実上の主張とに照らし右書証により立証しようとしている事実が明白な場合には、右書証の申出において証すべき事実の表示を欠いているときでも、裁判所が右書証を取り調べて事実認定の資料に供することは違法でない。
証すべき事実を表示しないで申し出られた書証の取調が違法でないとされた事例
民訴法258条
判旨
書証の申出において「証すべき事実」の表示が欠けていても、証書の記載内容と当事者の主張との関係から立証趣旨が明白であれば、当該書証を証拠資料とすることは適法である。
問題の所在(論点)
書証の申出に際し、民事訴訟法219条が規定する「証すべき事実」の表示が欠けている場合、裁判所はその書証を事実認定の資料とすることができるか。
規範
書証の申出において、民事訴訟法上の「証すべき事実(立証趣旨)」の表示が明確になされていない場合であっても、提出された書証の内容と当事者双方の事実上の主張との関係に照らし、当該書証がどのような事実を立証しようとしているのかが客観的に明白であるといえる場合には、裁判所は当該書証を取り調べて事実認定の資料に供することができる。
重要事実
上告人が乙第6号証から第13号証までの書証を提出したが、その申出に際して旧民事訴訟法258条1項(現行民訴法219条)に規定される「証すべき事実」の表示がなされなかった。しかし、これらの書証の内容および本件における当事者双方の主張との関係から、これらの書証が何を立証しようとしているのかは明白な状況であった。
あてはめ
本件において、上告人が提出した乙第6号証ないし第13号証の内容は、当事者間の事実上の主張と照らし合わせることで、何についての立証であるかが容易に判別可能であった。このような状況下では、形式的な「証すべき事実」の表示が欠けていたとしても、実質的には立証趣旨の明示があったのと同視でき、裁判所がこれを取り調べて事実認定に用いることは適法な証拠調べ手続といえる。
結論
書証の申出に際して「証すべき事実」の表示がなくても、立証趣旨が明白であれば、裁判所がこれを取り調べて事実認定の資料に供することに違法はない。
実務上の射程
民事訴訟における証拠調べ申出の方式違反の瑕疵が、どの程度の状況下で治癒されるかを示す。実務上、立証趣旨の記載は必須であるが、不備があっても当事者の主張や書面から趣旨が明白であれば、証拠能力や手続の適法性が否定されないことを示唆する。答案上は、証拠調べ手続の瑕疵の有無が争点となる場面で、実質的観点から適法性を肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和51(オ)918 / 裁判年月日: 昭和52年11月24日 / 結論: 棄却
判決の事実摘示欄に証拠関係についての記載を欠いても、上告理由とはならない。