判決の証拠に関する事実摘示として記録中の証拠目録を引用したにすぎない場合は、証拠関係を摘示したことにはならないが、記録及び原判決理由説示に徴し、右摘示を欠いたことは、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違背とはならない。
判決における事実欄の証拠摘示に記録中の証拠目録を引用したにすぎない場合について判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違背がないとされた事例
民訴法191条
判旨
判決において「証拠関係は本件記録中の証拠関係部分のとおりである」と記載することは、証拠に関する具体的な摘示をしたことにはならない。もっとも、その欠缺が判決に影響を及ぼしていると認められない場合には、上告理由にはあたらない。
問題の所在(論点)
判決書において「証拠関係は本件記録中の証拠関係部分のとおりである」と記載することが、適法な証拠の摘示といえるか。また、かかる記載に留まる場合に、直ちに判決に影響を及ぼす違法として上告理由となるか。
規範
判決書における事実の摘示として、単に記録上の証拠関係を参照する旨の記載を行うことは、法的に有効な証拠の摘示(当時の民事訴訟法における必要記載事項)とは認められない。ただし、その不備が判決の結論に影響を及ぼさない限り、上告理由となる違法(判決に影響を及ぼすべき法法令の違反等)を構成しない。
重要事実
本件の上告人が、原審の判決において「証拠関係は本件記録中の証拠関係部分のとおりである」とのみ記載され、具体的な証拠の摘示が欠けていることを理由に、判決の違法を主張して上告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件における判決書の記載は、証拠に関する具体的な摘示をしたものとはいえない。しかし、記録及び原判決の理由の説示を詳細に照らせば、当該証拠関係の具体的な摘示を欠いたことが、判決の論理的整合性や結論を左右するほどの影響を及ぼしているとは認められない。したがって、形式的な不備に留まり、実質的な判断の妥当性を揺るがすものではないと評価される。
結論
本件の判決書の記載方法は、証拠の摘示としては不十分であるが、判決に影響を及ぼしているとは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、判決書の形式的要件に関するものである。実務上、証拠の摘示を簡略化しすぎることの危険性を示しつつも、結論に影響がない限りは形式不備のみで破棄されることはないという判断基準を示している。答案作成上は、判決書の記載事項の欠欠が上告理由(民訴法312条等)となるかの検討において、本件のような判決への影響の有無という視点を用いる際に参照し得る。
事件番号: 昭和56(オ)526 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
書証の内容と当事者双方の事実上の主張とに照らし右書証により立証しようとしている事実が明白な場合には、右書証の申出において証すべき事実の表示を欠いているときでも、裁判所が右書証を取り調べて事実認定の資料に供することは違法でない。