一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。 二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
一 公立学校における教師の教育活動と国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」 二 損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否
国家賠償法1条1項,民法417条,民法722条1項
判旨
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には公立学校の教師による教育活動も含まれ、教師は教育活動に伴う危険から生徒を保護し事故を防止すべき注意義務を負う。
問題の所在(論点)
1. 公立学校の教師による教育活動が国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に該当するか。 2. 技術的に未熟な生徒に対し、難易度が高く危険を伴う指導を行う際の教師の注意義務の内容およびその違反の有無。
規範
1. 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。 2. 学校の教師は、教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負い、特に危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務を負う。指導方法の変更が空中での制御を困難にし、重大な事故を招く予見可能性が生じる場合には、当該方法の実施を控えるか、安全を確保するための具体的な措置・配慮を行う義務がある。
重要事実
公立中学校の体育の授業(プールでの飛び込み指導)において、D教諭は、スタート台からの静止状態での飛び込みに未熟な生徒が多い中、次の段階として「助走をしてスタート台に上がり飛び込む方法」を指導した。生徒Bは、この指導に従い練習中にプールの底に頭部を激突させる事故に遭遇した。D教諭は、自信のない者はスタート台を使う必要はない旨を告げていたが、具体的な危険性の説明や安全確保の措置は十分ではなかった。
あてはめ
1. 本件指導は公立学校の教育活動であり「公権力の行使」にあたる。 2. 助走を伴う飛び込みは踏み切りが難しく、姿勢を崩して水中深く進入する危険があり、専門的知識を有するD教諭には予見可能であった。静止状態でも未熟な生徒に対し、このような極めて危険な方法を指導することは、事故防止のための十分な措置を講じていないといえる。生徒が中学3年生であり危険性を十分に理解し得ない以上、「自信のない者は控えるように」と告げたのみでは、注意義務を尽くしたとは解されない。
結論
教師に注意義務違反(過失)が認められるため、設置者である自治体は国家賠償法1条1項に基づき賠償責任を負う。
実務上の射程
公立学校の事故において、教育活動全般に国賠法が適用されることを明言した基本判例である。答案上は、教育活動の公権力行使該当性を肯定した上で、具体的な注意義務の内容を「生徒の習熟度」や「当該行為の危険性」に照らして認定する際の枠組みとして活用する。
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