原判示の事実関係(原判決引用の第一審判決参照)の下においては、高等専門学校山岳部春山合宿の弱率指導教師は、同合宿に参加した学生の雪崩遭難死亡事故につき、山小屋に滞留せず下山を強行した点において、同合宿の実施により生じる危険から保護すべき注意義務を怠った過失がある。
高等専門学校の山岳部春山合宿の雪崩遭難死亡事故につき引率指導教師の過失が認められた事例
国家賠償法1条1項
判旨
学校行事としての部活動の引率指導にあたる教師は、行事により生じるおそれのある危険から生徒を保護し事故を未然に防止すべき注意義務を負い、この義務は参加した卒業生に対しても及ぶ場合がある。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項における「職務を行うについて」の公務員の注意義務に関し、学校行事として行われる部活動合宿の引率教師が、参加した現役学生および「卒業生」に対して負う注意義務の内容および範囲が問題となる。
規範
学校行事が教育活動の一環として行われる以上、引率教師は、当該行事により生じるおそれのある危険から参加者を保護すべき義務(安全配慮義務・一般的な注意義務)を負い、事故の発生を未然に防止すべき責務を負う。
重要事実
国立高等専門学校の山岳部顧問であるD助教授およびE講師は、公務出張として学校行事である春山合宿を引率指導していた。この合宿には、同校の現役学生だけでなく、卒業生である亡Fも参加していた。合宿中に雪崩事故が発生し、亡Fが死亡したため、引率教師らの注意義務違反の有無が争点となった。
あてはめ
本件合宿は学校行事として行われ、顧問らは公務として引率指導に当たっていた。山岳活動という危険を伴う活動の性質上、引率者は参加者を危険から保護する義務を負う。本件では、現役学生のみならず、合宿の実態や指導体制に照らし、同行していた卒業生Fに対しても、引率教師らは実施に伴う危険から保護すべき注意義務を負っていたと解される。その上で、雪崩の危険を予見し回避すべき義務の違反が認められた。
結論
引率教師らは、現役学生のみならず参加した卒業生に対しても、合宿実施に伴う危険から保護すべき注意義務を負っており、雪崩による死亡事故について注意義務違反(過失)が認められる。
実務上の射程
学校行事に伴う教師の保護義務の対象が、形式的な在校生に限定されず、実態として指導監督下にある参加者(卒業生等)にまで及びうることを示した点で重要である。答案上は、国家賠償法1条1項の「過失」を論じる際、学校側の具体的注意義務の根拠として、教育活動の性質と引率という事実上の支配関係に着目して論じるべきである。
事件番号: 昭和59(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和62年2月6日 / 結論: 棄却
一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。 二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
事件番号: 昭和57(オ)49 / 裁判年月日: 昭和59年2月9日 / 結論: 棄却
公立高校の生徒が体育自習授業の終了間際の体育用具の後片付け中に同級生に対し体操用マットではさんで踏みつける等の集団暴行を加えて重傷を負わせた事故について、右暴行が事故現場付近で他の学級の体育授業を行いながら右自習の監督もしていた教諭の監視しうる場所で公然と行われた等原判示の事実関係のもとにおいては、同教諭に生徒の安全保…