スキー・ロープ・トウ等を設置しスキー滑走場を開設している者又はこれを管理すべき立場にある者は、当該スキー滑走場においてスキー事故によつて受傷した者に対し、スキー滑走場の危険度、過去の事故数・その程度、来場するスキーヤーの能力、スキー事故の態様、状況等の具体的事情に対応する救護義務を負い、この義務を懈怠したときには民法七〇九条により不法行為責任を負う。
スキー滑走場の開設音叉はその管理者と右スキー滑走場において受傷した者に対する救護義務
民法709条
判旨
スキー場等の開設・管理者は、事故の危険性や過去の実績等の具体的事情に応じて、受傷者に対する救護義務を負い、その懈怠により不法行為責任(民法709条)を負う場合がある。
問題の所在(論点)
スキー場管理者等の営業主において、事故後の被害拡大を防止するための「救護義務」が認められるか、またその義務の内容はどのように判断されるべきか(民法709条の注意義務の内容)。
規範
スキー・ロープ・トウ等を設置しスキー滑走場を開設・管理する者は、当該滑走場において事故により受傷した者に対し、①スキー滑走場の危険度、②過去の事故数・その程度、③来場するスキーヤーの能力、④スキー事故の態様・状況等の具体的事情いかんによっては、これに対応する救護義務を負う。この義務を懈怠し、被害を拡大・発生させたときは、民法709条により不法行為責任を負うべき場合がある。
重要事実
上告人の子(洋治郎)は、スキー滑走場において事故により受傷したが、その後死亡した。上告人は、スキー場管理者には負傷者の発生を予測し、救護施設を完備して人命救助にあたるべき注意義務があるにもかかわらず、本件ゲレンデにおいて監視員によるパトロール、担架やスノーボートの用意、独自の救護施設の設置、さらには付近の救護施設の場所の明示すら行わなかったと主張した。上告人は、これらの救護措置の遅延が原因で、洋治郎が出血多量により死亡したとして損害賠償を請求した。
あてはめ
原審は、上告人が主張した「監視員の不在」「救護用具の未整備」「救護場所の不案内」といった具体的な注意義務違反の有無について判断を示していない。スキー場における受傷の予見可能性や、滑走場の設備状況、利用者のレベル、事故発生の態様等の諸事情を考慮し、管理者が負うべき具体的な救護義務の内容を特定した上で、義務違反の有無を審理すべきである。それを行わずに責任を否定した原判決には、判断遺脱または理由不備の違法がある。
結論
スキー場管理者の救護義務の有無・内容は具体的事情に基づき判断されるべきであり、その審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
本判決は、事故自体の発生防止(安全配慮義務)だけでなく、事故発生後の「救護」も不法行為上の注意義務の内容となり得ることを明示した。スポーツ施設やイベント運営者の過失を論じる際、事後対応の不備を独立した過失要素(救護義務違反)として構成する際の論拠となる。あてはめでは、施設の特性(危険度)や過去の事故例、管理体制(パトロール・備品)の有無を具体的に論じる必要がある。
事件番号: 平成6(オ)244 / 裁判年月日: 平成7年3月10日 / 結論: 破棄差戻
スキー場で上方から滑降する者が下方を滑降する者よりも速い速度で滑降し、両者が接触する事故が発生した場合において、事故現場が急斜面ではなく、下方を見通すことができたなど判示の事実関係の下においては、上方から滑降する者に、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるよう…