町立中学校の生徒が、放課後、体育館において、課外のクラブ活動中の運動部員の練習の妨げとなる行為をしたとして同部員から顔面を殴打されたなど判示のような事情のもとで生じた喧嘩により左眼を失明した場合に、同部顧問の教諭が右クラブ活動に立ち会つていなかつたとしても、右事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、右失明につき同教諭に過失があるとはいえない。
町立中学校の生徒が課外のクラブ活動中の生徒とした喧嘩により左眼を失明した事故につきクラブ活動に立ち会つていなかつた顧問の教諭に過失がないとされた事例
国家賠償法1条1項
判旨
課外のクラブ活動中における事故について、教諭は原則として常時立会い監視すべき義務を負わないが、事故発生の危険を具体的に予見可能であるような特段の事情がある場合には、指導監督義務違反(国家賠償法1条1項)が認められる。
問題の所在(論点)
学校教育活動の一環である「課外のクラブ活動」において、顧問の教諭が練習に立ち会わず不在にしていたことが、国家賠償法1条1項の「職務上の義務違反(過失)」に該当するか。特に、生徒間の突発的な暴行事件について、具体的な予見可能性が必要かが問われた。
規範
課外のクラブ活動は生徒の自主性を尊重すべきものであるため、何らかの事故が発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情がない限り、顧問の教諭は個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務を負わない。教諭の過失を認めるには、当該事故(本件では使用をめぐる紛争と暴行)が具体的に予見可能であったことを要する。
重要事実
公立中学校の放課後、体育館でバレーボール部とバスケットボール部が活動中、顧問らが不在の間に部員ではない生徒らが無断でトランポリンを持ち出し遊んでいた。これに反発したバレー部員Dが、当該生徒の一人である被上告人を倉庫に連れ込み顔面を数回殴打し、失明させた。原審は、体育館の共同使用により紛争が起きることは予測できたとして、教諭が不在であった点に過失を認めた。
あてはめ
本件事故の責任を問うには、トランポリン使用をめぐる喧嘩が教諭にとって具体的に予見可能であったかを確認すべきである。具体的には、過去の体育館使用における生徒間の対立や紛争の有無、トランポリンの管理状況、暴力防止に関する日頃の教育指導内容等を総合検討しなければならない。単に「生徒間の紛争が起こることが予測された」という抽象的な予見可能性のみで、常時立会・監督義務違反を肯定することはできない。
結論
教諭に具体的な予見可能性があったかを確認するため、さらなる審理を尽くさせるべく、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
学校事故における安全配慮義務の範囲を画定する重要判例である。授業中や休み時間とは異なり、課外活動においては「自主性の尊重」を理由に、具体的な予見可能性(特段の事情)がない限り常時立会義務を否定する。答案では、活動の性質(自主的か否か)を分析した上で、具体的な事故態様の予見可能性を検討する際の枠組みとして活用する。
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