公立小学校3年の男子児童が,朝自習の時間帯に,教室後方にあるロッカーから落ちていた自分のベストを拾うため離席し,ほこりを払おうとしてこれを頭上で振り回したところ,ファスナー部分がちょうど席を立って後ろを振り向いた女子児童の右眼に当たり当該女子児童が負傷した場合において,(1)担任教諭は,事故当時,教室入口付近の自席に座り,他の児童らから忘れ物の申告等を受けてこれに応対していたこと,(2)朝自習の時間帯であっても,児童が必要に応じて離席することは許されていたと解されること,(3)担任教諭において日ごろから特に上記男子児童の動静に注意を向ける必要があったという事情はうかがわれないこと,(4)ベストを頭上で振り回す直前までの上記男子児童の行動は特段危険なものでもなかったことなど判示の事情の下では,担任教諭が,ベストを頭上で振り回すという上記男子児童の突発的な行動に気付かず,事故の発生を未然に防止することができなかったとしても,担任教諭に児童の安全確保又は児童に対する指導監督についての過失があるとはいえない。
公立小学校3年の児童が,朝自習の時間帯に離席して,ロッカーから落ちていたベストのほこりを払おうとしてこれを頭上で振り回したところ,別の児童の右眼に当たり当該児童が負傷した事故につき,教室内にいた担任教諭に児童の安全確保等についての過失がないとされた事例
国家賠償法1条1項
判旨
学校の教室内で児童が突発的に行った危険な行為により事故が発生した場合、担任教諭が他の児童の正当な応対に従事しており、当該児童の従前の行動に特段の危険性や予見可能性が認められないときは、指導監督上の過失は認められない。
問題の所在(論点)
学校の教室内で発生した児童間の事故について、担任教諭が他の児童への応対により当該児童の動静を注視していなかった場合に、国家賠償法1条1項上の指導監督義務違反(過失)が認められるか。
規範
学校設置者等は、学校における教育活動又はこれに密接に関連する生活関係において、児童の安全を確保し、事故を未然に防止すべき指導監督義務を負う。もっとも、その過失の有無は、事故当時の具体的状況下において、教諭が当該児童の危険な行動を予見し、かつ回避することが可能であったか否かによって判断されるべきである。
重要事実
公立小学校の朝自習時間中、担任教諭は教室前方の自席で、忘れ物の申告に来た数名の児童の対応をしていた。その際、後方にいた児童Aが、ロッカーから落ちたベストを拾い、埃を払うために頭上で数回振り回したところ、ファスナーが付近にいた児童Xの右眼に当たり負傷させた。Aに日常的な乱暴な行動等の事情はなく、教諭は一連の行動に気付いていなかった。
あてはめ
まず、朝自習中の離席であっても、忘れ物の申告や用具の整理は児童にとって必要な行動であり、学級の約束に反せず合理的である。次に、Aに日常的な問題行動はなく、離席自体を注視すべき事情はなかった。さらに、ベストを振り回す直前までのAの行動は自然かつ特段危険なものではなく、教諭が他の児童への正当な応対に従事している中で、突発的に行われた危険な行為を予見し、制止することは困難であったといえる。
結論
担任教諭に児童の安全確保又は指導監督についての過失があるとはいえず、上告人(自治体)は損害賠償責任を負わない。
実務上の射程
教室内の事故における教師の注意義務の限界を示した事例である。教師が他の児童の対応という正当な職務に従事している場合、突発的かつ特異な危険行動についてまで一般的・包括的な注視義務を認めるものではないことを示唆しており、過失の具体的予見可能性・回避可能性を厳格に判断する際の指標となる。
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