公立高校の生徒が体育自習授業の終了間際の体育用具の後片付け中に同級生に対し体操用マットではさんで踏みつける等の集団暴行を加えて重傷を負わせた事故について、右暴行が事故現場付近で他の学級の体育授業を行いながら右自習の監督もしていた教諭の監視しうる場所で公然と行われた等原判示の事実関係のもとにおいては、同教諭に生徒の安全保持上の過失がある。
公立高校の生徒が体育自習授業の終了間際に起こした同級生に対する集団暴行による傷害事故について事故現場付近で他の学級の体育授業を行いながら右自習の監督もしていた教諭に安全保持上の過失があるとされた事例
国家賠償法1条1項
判旨
学校の体育授業中、教諭が監視し得る場所で公然と行われた集団暴行について、教諭はこれを制止して生徒の身体の安全を保持すべき義務を怠った過失があると解される。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項の「過失」に関し、体育授業中に発生した生徒間の集団暴行について、担当教諭に暴行を制止し生徒の安全を確保すべき注意義務違反が認められるか。
規範
学校教育活動(体育授業等)において、担当教諭は、生徒の生命・身体に危険が及ぶような事態が発生し得る場合、その状況を把握し、事態を制止して生徒の身体に対する安全を保持すべき注意義務を負う。具体的には、教諭の監視し得る場所で公然と暴行が行われている場合には、速やかにこれを発見・制止すべき義務が認められる。
重要事実
公立中学校の体育授業時間内から終了時にかけて、多数の生徒によって一人の生徒(被上告人)に対する集団暴行が行われた。この暴行は、担当教諭であるDが監視し得る場所で、かつ公然と行われていた。
あてはめ
本件暴行は、体育の授業中という教諭の直接的な監督下にある時間帯に行われた。また、暴行の態様は多数の生徒による公然としたものであり、かつ教諭Dが物理的に監視可能な場所で行われていた。このような客観的状況下では、教諭は暴行の発生を容易に認識し得たといえる。それにもかかわらず、教諭Dが暴行を発見・制止せず、被上告人の身体の安全を確保しなかったことは、安全保持義務に違反する過失があるものと評価される。
結論
教諭Dには注意義務違反(過失)が認められ、設置者である上告人は被上告人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
実務上の射程
学校事故における教諭の注意義務の有無を判断する際の基準となる。特に「授業中」「監視可能な場所」「公然性」という要素が、予見可能性および回避可能性(制止義務)を基礎付ける重要な事実として機能することを示している。答案上は、学校側の安全配慮義務違反や国賠法上の過失を論じる際、事案の場所的・時間的近接性を指摘する論理として活用できる。
事件番号: 昭和61(オ)255 / 裁判年月日: 平成2年11月8日 / 結論: 破棄差戻
大型貨物自動車が県道端の縁壁を越えて右県道と並進している約六・八メートル下の日本国有鉄道の軌道敷内に転落し、折から進行して来たディーゼル気動車がこれと衝突して脱線したため、その乗客が死傷した事故につき、右縁壁がその材質、高さ、形状等の構造に加え、県道の幅員や見通し状況、側溝の存在等に照らし、転落防止の機能に欠けるところ…