大型貨物自動車が県道端の縁壁を越えて右県道と並進している約六・八メートル下の日本国有鉄道の軌道敷内に転落し、折から進行して来たディーゼル気動車がこれと衝突して脱線したため、その乗客が死傷した事故につき、右縁壁がその材質、高さ、形状等の構造に加え、県道の幅員や見通し状況、側溝の存在等に照らし、転落防止の機能に欠けるところがなく、事故は、自動車の運転手が誤って自動車の右前輪を側溝に落とした際、アクセル・ペタルを踏み込んで加速した勢いで側溝から脱出しようとし、右前輪のホイルナット付近を縁壁に激突させた状態で約一七.六メートルも自動車を進行させ、縁壁の一部をはく離、崩落させて自動車を路外に進出させるという極めて異常かつ無謀な運転によって生じたものであって、右行動が機関車、貨客車、軌道設備、軌道の敷地その他これに関連する鉄道施設の設置管理者の通常予測することのできないものであったなど判示の事実関係の下においては、鉄道施設の設置又は管理に瑕疵があるとはいえない。
大型貨物自動車が県道端の縁壁を越えて右県道と並進している日本国有鉄道の軌道敷内に転落しディーゼル気動車がこれと衝突して脱線したためその乗客が死傷した事故につき鉄道施設の設置又は管理に瑕疵がないとされた事例
国家賠償法2条1項
判旨
国家賠償法2条1項の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これは設置管理者が通常予測することのできる用法を前提として判断されるべきである。通常予測できない異常かつ無謀な行動に起因する事故については、営造物の設置・管理に瑕疵があったとはいえない。
問題の所在(論点)
国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」の判断基準、および第三者の異常な行動が介在した場合における「通常有すべき安全性」の範囲。
規範
国家賠償法2条1項にいう「設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が「通常有すべき安全性」を欠いていることをいう。右の安全性は、営造物の設置管理者において「通常予測することのできる用法」を前提として定めるべきであり、通常の用法に即しない行動の結果生じた事故については、特段の事情がない限り、設置管理上の瑕疵によるものとはいえない。
事件番号: 平成2(オ)1650 / 裁判年月日: 平成6年10月27日 / 結論: 棄却
一 堤防の基礎地盤に破堤の要因があって水害が生じたとしても、基礎地盤については、過去における災害時の異常現象等によって欠陥のあることが明らかとなっているなど特段の事情のある場合を除き、そのすべてについて、あらかじめ安全性の有無を調査し、所要の対策を採るなどの措置を講じなければならないものではなく、右特段の事情が認められ…
重要事実
大型ダンプカーの運転手Dは、県道で先行車を無理に追い越そうとして側溝に脱輪した。Dは減速・停止せず、加速して脱出を試みた結果、ハンドルを取られて高さ約40cmの石造縁壁に激突・崩落させ、約13.3mにわたり縁壁を破壊しながら進行し、線路内へ転落した。そこへ列車が衝突し、死傷者が発生した。本件県道は幅員7.7mで直線の見通しが良く、側溝と縁壁により一定の路外逸脱防止機能が備わっていた。
あてはめ
本件県道には側溝および高さ約40cmの縁壁が設置されており、通常予測される用法を前提とする限り、車両の路外転落を防止する機能に欠けるところはなかった。Dの行動は、脱輪後に停止せず加速して強引な脱出を図り、長距離にわたり縁壁を破壊し続けるというものであり、本件の地理的状況に照らしても「極めて異常かつ無謀な運転行為」といえる。このような通常予測できない無謀な行動を前提とした転落防止施設や保安施設まで設置する義務を国鉄が負うものではない。
結論
本件鉄道施設が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえず、国家賠償法2条1項の瑕疵は認められない。
実務上の射程
営造物の瑕疵の判断において「通常予測される利用態様」という限定を付した。司法試験答案では、被害者や第三者の行動が異常である場合に、管理者の義務を限定し、不可抗力に近い事案で瑕疵を否定する際の有力な規範として活用できる。ただし、完全な無謀運転以外(軽微な過失等)では瑕疵が否定されにくい点に注意が必要である。
事件番号: 昭和53(オ)854 / 裁判年月日: 昭和53年12月22日 / 結論: 棄却
本件事故現場における本件用水溝は、その護岸壁の高さや水深(原判示参照)からいつて通常の幼児や成人にとつてその生命、身体に危険を生じさせるものではなく、このような営造物については、本件被害者のような一年七月程度の乳幼児が保護者の監護を離れたために生ずべき事故をも防止しうるような措置が講じられていなくても、その管理に瑕疵が…