有限会社に対し売掛債権を有していた甲が右会社の倒産による右債権の回収不能により取締役に対して有限会社法三〇条ノ三第一項に基づく損害賠償請求権を取得した場合において、右売掛債権が甲から乙に譲渡されても、乙は右の損害賠償請求権を当然には取得しない。
有限会社に対する売掛債権の譲渡と譲渡人の取締役に対する有限会社法三〇条ノ三第一項に基づく損害賠償請求権の承継の成否
有限会社法30条ノ3,民法466条
判旨
会社に対する債権者が、会社の取締役に対し役員等の第三者責任(旧有限会社法30条の3第1項、現会社法429条1項)に基づく損害賠償請求権を取得した場合、会社に対する債権を第三者に譲渡しても、当該損害賠償請求権を別途譲渡しない限り、債権譲受人は当然には当該請求権を取得しない。
問題の所在(論点)
会社に対する債権が譲渡された場合、その債権者が取締役に対して有する会社法429条1項に基づく損害賠償請求権は、随伴性等により当然に債権譲受人に移転するか。
規範
会社に対する債権の譲渡が行われた場合であっても、会社の取締役に対する役員等の第三者責任に基づく損害賠償請求権は、会社に対する債権とは別個の権利である。したがって、当該損害賠償請求権自体を譲渡する旨の合意がない限り、債権譲受人が当然に当該請求権を取得することはない。
重要事実
有限会社Dに対し売掛債権を有していた株式会社Eは、Dの倒産により債権回収が不能となった。これによりEは、Dの取締役である被上告人に対し、旧有限会社法30条の3第1項(現会社法429条1項相当)に基づく損害賠償請求権を取得した。その後、上告人はEからDに対する売掛債権の譲渡を受けたが、被上告人に対する損害賠償請求権の譲渡については、当事者間での主張や認定がなされていなかった。
あてはめ
本件において、上告人は株式会社Eから有限会社Dに対する売掛債権を譲り受けている。しかし、会社法上の取締役の第三者責任に基づく損害賠償請求権は、会社に対する債権そのものではなく、法の規定により特別に認められた別個の法定責任に基づく権利である。上告人がEから被上告人に対する当該損害賠償請求権の譲渡を受けたという事実は認められない以上、主たる債権である売掛債権の譲渡に伴って、当然に当該損害賠償請求権が移転したと解することはできない。
結論
上告人は、取締役に対する損害賠償請求権を当然に取得するものではないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
会社法429条1項(旧有限会社法30条の3第1項)の責任が、対会社債権の付随的権利(随伴性のある従たる権利)ではなく、固有の損害賠償請求権であることを示したものである。答案上、債権譲受人が役員の責任を追及する場面では、債権譲渡に加えて「損害賠償請求権自体の譲渡」が必要であることを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)531 / 裁判年月日: 昭和47年6月15日 / 結論: 棄却
一、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が故意または過失により右登記につき承諾を与えていたときは、同人は、商法一四条の規定の類推適用により、自己が取締役でないことをもつて善意の第三者に対抗することができない。 二、株式会社において、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が商法一四条の規定の類推適用…