合資会社の社員の金銭出資義務の履行期につき定款又は総社員の同意による定めがない場合において、出資義務の履行請求前に社員が退社したときは、右社員の会社に対する持分払戻請求権は成立しない。
履行期が定められていない合資会社の社員の金銭出資義務につき会社の履行請求前に社員が退社したときと右社員の会社に対する持分払戻請求権の成否
商法89条,商法147条
判旨
合資会社の社員の金銭出資義務は、履行期が定められていない限り、会社の請求により初めて特定額の給付を目的とする金銭債務として具体化し、それ以前の出資義務は退社により消滅するため、未履行のまま退社した社員は持分払戻請求権を取得しない。
問題の所在(論点)
履行期の定めがなく、かつ会社からの履行請求もなされていない未履行の金銭出資義務を負う社員が退社した場合、会社に対し持分払戻請求権を行使できるか。
規範
合資会社の社員の金銭出資義務は、定款や総社員の同意で履行期が定められていない場合、会社の請求によって初めて履行期が到来し、特定額の給付を目的とする具体的な金銭債務となる。かかる債務として具体化する前の出資義務は社員の地位と不可分であり、退社により社員の地位を喪失すれば出資義務も消滅する。その結果、出資を完了していない退社員は、会社に対し持分払戻請求権を取得しない。
重要事実
1. 被上告会社(合資会社)の有限責任社員であった上告人らは、定款上、金銭出資(各30万5000円〜61万円)を行うこととされていた。 2. 登記簿上は出資完了とされていたが、実際には上告人らは退社前に当該金銭を現実に支払っていなかった。 3. 定款や同意による履行期の定めはなく、退社前に会社から出資履行の請求を受けたこともなかった。 4. 上告人らは、出資未履行のまま会社を退社し、持分払戻を請求した。
あてはめ
1. 本件では、定款や総社員の同意によって出資の履行期が定められておらず、会社からの請求もなされていなかった。したがって、上告人らの金銭出資義務は、具体的な金銭債務として具体化していなかったといえる。 2. このような具体化前の出資義務は、社員の地位に伴う性質のものであり、上告人らが退社したことにより当該義務は消滅したと解される。 3. 出資義務が具体化せず消滅した以上、出資を完了していない上告人らには、持分の払い戻しを認めるべき基礎が存在しない。
結論
上告人らは、退社による持分払戻請求権を取得しない。したがって、上告人らの請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
持分会社における退社社員の持分払戻しの前提条件に関する判例である。会社法下においても、持分払戻しは「退社時における持分の価額」(会社法611条)を基準とするが、出資未履行のまま退社した場合に払戻しが認められないという理屈は、現行法における持分払戻しの算定実務(出資履行済み部分の評価)においても重要な示唆を与える。
事件番号: 昭和50(オ)326 / 裁判年月日: 昭和54年2月23日 / 結論: その他
一 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の脱退組合員に対する払戻持分の計算のため組合財産を評価するにあたり、将来退職する組合役員・従業員に支払われるべき退職慰労金・退職金につき当期末現在の状態を基準として算出したその相当額を負債として計上することはできない。 二 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の理事会の全員の協議…
事件番号: 昭和38(オ)224 / 裁判年月日: 昭和40年11月11日 / 結論: 破棄差戻
合資会社の社員数名が同時退社の申出をした場合には、各退社申出者ごとに、その者を除く他のすべての社員の同意がなければ、総社員の同意があつたとはいえない。