中小企業等協同組合法に基づく協同組合の組合員が組合から脱退した場合における払戻持分の計算の基礎となる組合財産の評価は、いわゆる帳簿価額によるべきではなく、協同組合の事業の継続を前提とし、なるべく有利にこれを一括譲渡する場合の価額を標準とすべきものと解するのが相当である。
中小企業等協同組合法に基づく協同組合の脱退組合員に対する持分払戻と持分計算の基礎となる組合財産の評価方法
中小企業等協同組合法20条
判旨
中小企業協同組合の組合員が脱退した際の持分払戻しの基礎となる組合財産の評価は、損益計算目的の帳簿価額ではなく、事業継続を前提としつつ、なるべく有利に一括譲渡する場合の価額(時価)を標準とすべきである。
問題の所在(論点)
中小企業協同組合法20条に基づく脱退組合員への持分払戻しにおいて、組合財産の評価基準は「帳簿価額」と「時価(客観的価額)」のいずれによるべきか。
規範
協同組合の組合員が脱退した場合における持分計算の基礎となる組合財産の価額は、組合の損益計算の目的で作成されるいわゆる帳簿価額によるべきではない。協同組合としての事業の継続を前提としつつ、これをなるべく有利に一括譲渡する場合の価額(客観的な時価)を標準として評価すべきである。
重要事実
上告人である中小企業協同組合の組合員であったD(被上告人らの先代)が組合を脱退した。これに伴い、被上告人らが組合員としての持分払戻しを請求したところ、払戻額の算定基礎となる組合財産(本件土地)の評価方法が争点となった。上告組合側は、中小企業協同組合法20条に基づき、貸借対照表に記載された帳簿価額によるべきと主張したが、原審は鑑定による脱退時の時価を採用して持分額を算定したため、組合側が上告した。
あてはめ
持分払戻制度の本旨は、脱退時における組合財産の客観的な実質価値を精算することにある。本件において、原審が損益計算用の帳簿価額にとらわれず、鑑定意見に基づき脱退当時の本件土地の時価をもって組合財産の価額を算定したことは、事業継続を前提とした一括譲渡価額を標準とするという上記規範に合致する。また、複数の鑑定意見がある場合にそのいずれを採用するか、あるいは平均値を採用するかは事実審の自由裁量に属する事柄であり、合理的な範囲内であれば違法とはいえない。
結論
組合財産の評価は、帳簿価額ではなく、脱退時の時価(事業継続前提の一括譲渡価額)を基準とすべきである。したがって、時価により算定した原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、協同組合からの脱退に伴う持分払戻請求における「持分」の算定基準を明確にしたものである。答案作成上は、定款等に別段の定めがない限り、含み損益を反映した実質的な時価評価が必要であることを論じる際に引用する。また、評価手法について複数の鑑定がある場合の裁量を認めた点も、事実認定の局面で参考となる。
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