訴訟当事者である法人の代表者の代表権が消滅した場合において、旧代表者から委任を受けた訴訟代理人があるときは、右代表権消滅の事実が相手方に通知されていなくても、判決に新代表者を表示することは許される。
法人の代表者の代表権が消滅しその通知がない場合の判決の表示
民訴法58条,民訴法57条1項,民訴法85条,民訴法191条1項
判旨
法人の代表権消滅の通知前であっても、訴訟代理人が存続する場合には、判決書に新代表者を表示することは許される。また、新代表者を表示した判決の送達により代表者交替の通知がなされたと解することができ、これを前提に争った相手方はもはや手続の違法を主張できない。
問題の所在(論点)
法人の代表者が交替した際、相手方への通知(民訴法37条、36条)がないまま、判決書に新代表者を表示することの適法性、および当該判決の送達による通知・受継の効果が問題となる。
規範
民訴法37条(旧58条、57条)の趣旨は、代表者交替による訴訟手続の中断を回避し、通知の有無による画一的処理を通じて手続の安定と明確を期することにある。訴訟代理人が存在する場合、代表権消滅後も代理権は消滅せず(同法58条1項、旧85条)、代理人は実質上、新代表者の委任に基づき訴訟を追行するものといえる。したがって、通知前であっても判決書に新代表者を表示することは許容される。
重要事実
第一審の途中で被上告人(法人)の代表理事Dが退任し、Eが就任したが、その事実は口頭弁論終結後まで上告人に通知されなかった。しかし、一審判決には新代表者Eが表示され、上告人もEを代表者として控訴を提起した。原審(二審)では、Eから改めて委任を受けた代理人が出頭して弁論を行い、原判決もEを代表者と表示した。上告人は、代表者交替の通知を欠く手続の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件では訴訟代理人が存在したため、代表権消滅後も手続は中断せず、代理人は実質的に新代表者のために活動していたといえるから、一審判決がEを表示したことは違法ではない。また、新代表者Eを記載した一審判決の送達により代表者交替の事実は上告人に通知されたといえる。さらに、上告人自身がEを新代表者と認めて異議なく控訴手続を進めている以上、今さら代表権を否定して手続の違法を主張する利益はないと解される。
結論
代表者交替の通知を欠いたまま新代表者を表示した判決に違法はなく、また、判決の送達等により通知や受継があったと認められるため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟代理人がいる場合の代表者交替における「通知」の省略を実質的に許容し、判決送達による通知の効果を認める実務的な指針となる。答案上は、訴訟手続の安定を重視する文脈や、信義則的な観点から手続の瑕疵の主張を封じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和56(オ)1262 / 裁判年月日: 昭和58年4月7日 / 結論: 破棄差戻
合名会社を退社した社員の会社に対する持分払戻請求訴訟については、商法七九条は、適用されない。
事件番号: 昭和39(オ)241 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
後任理事の選任があるまでは退任理事になお従前の権限を行わせる旨寄附行為に規定されている場合の右権限の存続期間は、後任理事の選任手続に要する相当期間に限られると解すべきではない。