D労働組合の下部組織として同組合との間に判示のような関係に立つ独立の権利能力なき社団である地方本部において、所属組合員の約三分の二が組合の運動方針に反対して集団的に組合を離脱し新組合を結成したため、地方本部が事実上分裂したとみられる場合であつても、D労働組合そのものが統一的組織体としての機能を失わず、かつ、地方本部に残留した組合員が同組合の方針に従い引き続き地方本部としての団体活動を継続しているときは、右新組合は、地方本部の財産につき持分ないし分割請求権を有するものということはできない。
労働組合の下部組織が事実上分裂した場合において離脱組合員の結成した新組合が右下部組織の財産につき権利を有しないとされた事例
労働組合法12条,民法72条
判旨
単一組織の労働組合の下部機関が、権利能力なき社団としての実体を有する場合でも、その資産は構成員に総有的に帰属し、上部団体の規約による制約を受ける。組合員の一部が反対派として集団脱退し新組合を結成しても、上部団体が存続し下部機関に残留組合員がいる限り、資産の分割請求は認められない。
問題の所在(論点)
権利能力なき社団の実体を有する労働組合の下部組織において、組合員の集団的離脱が生じた場合、当該離脱は組織の「分裂」として資産の分割請求を可能にするか、あるいは単なる「集団脱退」として残留組織に資産が帰属するか。
規範
1. 単一組織の下部機関であっても、独立の代表者、議決・執行機関、独自の規約・会計規則を有し、自己の名で取引を行うなど独立の団体としての組織性を備える場合は、権利能力なき社団としての実体を有する。2. このような社団の資産は構成員に総有的に帰属する。3. 下部組織の社団としての独立性は、本来上部団体の内部的構成分子としての制約を免れない。したがって、上部団体が統一的組織体として存続する限り、一部組合員の集団的離脱は単なる脱退にすぎず、組織の「分裂」による資産分割請求権は認められない。
重要事実
単一組合であるD労組の下部機関「元大分地方本部」において、運動方針を巡り支持派と反対派が対立した。反対派が多数を占め上部方針に反する決議を行ったため、本部が執行権停止等の統制権を発動したところ、反対派(約2600名)が離脱して「上告人組合」を結成した。一方で、元地方本部には支持派(約1200名)が残留し、「被上告人地方本部」として活動を継続した。上告人組合は、元地方本部の資産である預金について、公平の観点から分割請求を主張した。
あてはめ
元大分地方本部は独立の社団実体を有するが、D労組の規約により存在を認められた下部組織であり、その自治は本部方針に反しない範囲に限定されていた。本件では、多数派が離脱したとはいえ、D労組本部は存続しており、かつ被上告人地方本部には依然として本部方針に従う組合員が残留して団体活動を継続している。したがって、被上告人が従前の組織との同一性を保持しており、反対派の行動はD労組からの「集団脱退」にほかならない。脱退者が、上部団体の活動基盤として形成された資産について権利を主張することは、下部組織としての制約上認められない。
結論
上告人組合の離脱は単なる集団脱退であり、従前の組織との同一性を保持する被上告人に対し、預金資産の分割請求をすることはできない。
実務上の射程
権利能力なき社団の資産帰属(総有)の原則を確認しつつ、単一組織の一部門が独立性を有する場合の限界を示した。労働組合に限らず、中央集権的な組織の下部組織において、多数派が離脱して新組織を作ったとしても、規約上の手続に基づかない限り、資産の持ち出しを認めない実務上の指針となる。
事件番号: 昭和41(オ)288 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 破棄差戻
一、民訴法第七一条の参加に基づく、参加人、原告、被告間の訴訟について本案判決をするときは、右三当事者を判決の名宛人とする一個の終局判決のみが許され、右当事者の一部に関する判決をすることも、また、残余のものに関する追加判決をすることも、許されない。 二、右に違背してされた一部判決の違法は職権調査事項にあたる。