省略
労働組合から脱退した組合員の組合に対する闘争資金積立金の返還請求が認容された事例
労働組合法2条,労働組合法5条
判旨
労働組合の闘争資金積立金が、組合員による預託金としての性質を有する場合、組合員は、自らの意思により組合を脱退した際、当該積立金の払戻しを請求することができる。
問題の所在(論点)
組合員が自らの意思で労働組合を脱退した場合に、徴収済みの闘争資金積立金の払戻請求権が認められるか。特に、当該積立金の法的性質をいかに解すべきかが問題となる。
規範
労働組合が徴収する積立金の法的性質が、組合員がその資格を保有する間、特定の目的のために運用することを組合に委託した「組合員個人の積立預託金」としての性質を有する場合、組合員がその資格を喪失したときは、その喪失事由を問わず、組合は払戻しを拒むことができない。
重要事実
上告人である労働組合には、闘争資金積立規程が存在した。同組合の組合員であった被上告人らが、争議中に自らの意思により組合を脱退したため、既に払い込んだ闘争資金積立金の返還(払戻し)を求めた。これに対し、組合側は脱退を理由とする払戻しを拒否した。
あてはめ
本件の闘争資金積立規程の内容に照らせば、当該積立金は組合員が組合員資格を有する期間中、規程所定の目的達成のために運用を委託した「組合員個人の積立預託金」であると認められる。このような性質を有する以上、資格喪失の理由が死亡や退職といった非自発的なものか、自らの意思による脱退かに関わらず、資格喪失という事実をもって委託関係は終了し、払戻義務が生じると評価される。
結論
本件積立金は組合員個人の積立預託金としての性質を有するため、自らの意思で脱退した被上告人らに対し、組合は払戻しを拒むことができない。
実務上の射程
本判決は、積立金の法的性質が「預託金」であると認定されることを前提としている。答案上は、組合規程の文言から、それが組合の総有に属する「団結権保障のための拠出金」なのか、個人の属性が強い「預託金」なのかを区別する際のメルクマールとなる。後者と判断される場合には、脱退の自由(組織強制との関係)を背景に、払戻請求を肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)917 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 破棄差戻
出資金なりや、キーマネーなりや争ある重要な争点について判断を遺脱した判決に、理由不備ありとされた事例。