合資会社の社員数名が同時退社の申出をした場合には、各退社申出者ごとに、その者を除く他のすべての社員の同意がなければ、総社員の同意があつたとはいえない。
合資会社の社員数名が同時退社の申出をした場合における総社員の同意。
商法85条2号,商法147条
判旨
合資会社の社員数名が同時に任意退社する場合、定款に別段の定めがない限り、残留する社員のみならず退社申出者相互間を含めた「総社員の同意」が必要である。退社予定者も効力発生までは社員の地位にあり、残留社員の顔ぶれについて重大な利害関係を有するためである。
問題の所在(論点)
合資会社の社員数名が同時に退社の申出をした場合、旧商法85条2号(現行会社法606条3号参照)にいう「総社員の同意」には、退社申出者相互間の同意が含まれるか。言い換えれば、残留社員のみの同意で足りるのか、それとも退社する社員同士の同意も必要かが問題となった。
規範
合資会社における社員の任意退社(旧商法147条、85条2号)において「総社員の同意」を要する場合、数名が同時に退社を申し出たときであっても、各退社申出者自身を除く他のすべての社員(他の退社申出者を含む)の同意を必要とする。ただし、定款で社員の過半数の同意による退社を認める等の別段の定めがある場合はこの限りではない。
重要事実
上告会社の前身であるE合資会社において、昭和12年4月28日、社員B1、B2、Dの3名が同時に退社の申出をした。その後、同月30日にはFも退社した。この3名の同時退社にあたり、残留する社員の同意はあったものの、退社する3名の間での相互の同意(退社申出者相互間の同意)は存在しなかった。原審は、残留する社員の同意があれば足りると判断して退社を有効としたため、会社側がこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和36(オ)892 / 裁判年月日: 昭和38年6月14日 / 結論: 破棄差戻
中間省略登記の請求を認容するには、右省略について登記名義人、中間者の同意が必要である。
あてはめ
まず、合資会社は組合的結合としての本質を有しており、退社の効力が生じるまでは、退社申出者も依然として社員の地位を保持している。次に、社員は退社後も会社債務について一定の責任を負う(旧商法93条等)ため、自己と同時に誰が退社し、誰が残留して企業経営を継続するのかについて、具体的な利害関係を有している。したがって、同時退社の場合であっても、各退社申出者には相互に同意権が留保されていると解するのが、同条条文の法意に合致する。本件では、B1ら3名の間に相互の同意が欠けている以上、原則として「総社員の同意」があったとは認められない。
結論
数人の同時退社には、退社申出者相互間の同意が必要である。これを不要とした原判決には法律解釈の誤りがあり、破棄を免れない。退社申出者相互間に同意があったか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
持分会社の任意退社における「総社員の同意」の範囲を確定した重要な判例である。現行会社法606条3号(各社員の任意退社)の解釈においても同様の理が妥当する。答案上は、持分会社が人的信頼関係を基礎とする「組合的性格」を持つこと、および退社後の責任(会社法612条)という実益面から、同意権の範囲を厳格に解する根拠として論じるべきである。
事件番号: 昭和42(オ)408 / 裁判年月日: 昭和42年10月6日 / 結論: 棄却
会社の営業用財産の全部または重要な一部の譲渡であつても、それが営業を構成する各個の財産としてのみの譲渡であるときは、そのために、譲渡会社が当然営業を廃止し、またはその営業の規模を大幅に縮小するのやむなきにいたる等、当該譲渡会社の運命に重大な影響を及ぼす場合であつても、有限会社法第四〇条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ…
事件番号: 昭和31(オ)583 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合の共同事業の用に供する目的で買い受けられた土地は、登記名義のいかんに関わらず組合財産として組合員の共有に帰する。また、組合員の合意や承認により持分が放棄された場合、当該土地は特定の者の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、上告人、訴外Dの3名は、アイスケーキ製造販売業を共同で営むこと…
事件番号: 昭和39(オ)614 / 裁判年月日: 昭和40年7月6日 / 結論: 棄却
農地の売買契約を締結する場合には、知事の許可を停止条件とする旨の付款を要するものではなく、右のような条件を付していないからといつて、直ちにその売買契約が無効なものと確定するわけのものではない。
事件番号: 昭和41(オ)1438 / 裁判年月日: 昭和42年10月31日 / 結論: 破棄差戻
甲が乙に不動産を仮装譲渡し、丙が善意で乙からこれを譲りうけた場合であつても、丙が所有権取得登記をする前に、甲からの譲受人丁が乙を債務者とし該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは、丙はその所有権取得を丁に対抗することができない。