甲が乙に不動産を仮装譲渡し、丙が善意で乙からこれを譲りうけた場合であつても、丙が所有権取得登記をする前に、甲からの譲受人丁が乙を債務者とし該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは、丙はその所有権取得を丁に対抗することができない。
民法第九四条第二項の善意の第三者が不動産の所有権取得登記をする前に処分禁止の仮処分登記がされた場合の法律関係
民法94条
判旨
不動産の譲受人が未登記の間に、譲渡人を債務者とする処分禁止の仮処分登記がなされた場合、譲受人はその後の登記具備をもってしても仮処分債権者に所有権取得を対抗できない。
問題の所在(論点)
不動産の二重譲渡等に類する場面において、未登記の譲受人と、その後に処分禁止の仮処分登記を経由した仮処分債権者との優劣関係(民法177条の対抗問題)が問題となる。
規範
不動産の譲受人が所有権取得登記を備える前に、譲渡人を債務者とする処分禁止の仮処分登記が経由された場合、譲受人は、その後に登記を経由したとしても、所有権の取得をもって仮処分債権者に対抗することはできない。ただし、当該仮処分がその後適法に取り消され、その判決が確定した場合には、譲受人は所有権取得を対抗できるようになる。
重要事実
不動産の譲受人である被上告会社が所有権取得登記を未了のうちに、上告人を債権者、譲渡人を債務者とする当該不動産の処分禁止仮処分登記がなされた。その後、被上告会社は所有権取得登記を完了した。原審は、仮処分登記の存在は被上告会社の所有権取得の妨げとならないとし、また記録上仮処分取消判決があることを理由に被上告会社の権利を認めたが、当該取消判決の確定については証拠上不明であった。
事件番号: 昭和41(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
不動産の買主がその売主に対してなしたいわゆる処分禁止の仮処分がある場合に、右不動産の他の買主が同一不動産について第二次の処分禁止の仮処分をすることは妨げられないが、第一次仮処分の債権者が、被保全権利の実現として、右売買契約に基づく所有権移転登記を経由したときは、第二次仮処分の債権者は、自己の仮処分の効力を主張して右所有…
あてはめ
本件では、被上告会社の所有権取得登記以前に上告人による処分禁止の仮処分登記が経由されている。仮処分には処分禁止の効力があるため、未登記の譲受人である被上告会社は、後に登記を備えたとしても原則として上告人に対し所有権取得を主張できない。原審が指摘する仮処分取消判決については、その確定が証明されない限り、上告人に対する対抗力を認めることはできない。
結論
被上告会社は、現時点では所有権取得を上告人に対抗できず、原審の判断には法令解釈の誤りおよび審理不尽があるため、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
処分禁止の仮処分登記と登記未了の権利者の優劣を論じる際のリーディングケースである。答案上は、民法177条の「第三者」の枠組みにおいて、仮処分債権者が登記を先に備えた場合には、たとえ譲受人が実体法上の権利を先に取得していても勝てないことを示すために用いる。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和35(オ)1408 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
講の実態が営業的無尽であつて、相互銀行法第二条第一項第一号に違反するとしても、これをもつて直ちに講と加入者との間の講に関する契約が公序良俗に違反し無効となるものではない。
事件番号: 昭和42(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和43年3月8日 / 結論: 棄却
訴の主観的予備的併合は不適法である。
事件番号: 昭和39(オ)1368 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。