一 戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用対象者に一般民間人戦災者を含めるよう同法を改正するか、又は、一般民間人戦災者を適用対象者とする同趣旨の援護立法を制定しない国会ないし国会議員の行為は、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらない。 二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用対象者に一般民間人戦災者を含めるよう同法を改正するか、又は一般民間人戦災者を適用対象者とする同趣旨の援護立法を制定するための法律案を国会に提出しない内閣の行為は、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらない。
一 一般民間人戦災者を対象とする援護立法をしない国会ないし国会議員の行為と国家賠償責任の有無 二 一般民間人戦災者を対象とする援護立法に係る法律案を国会に提出しない内閣の行為と国家賠償責任の有無
戦傷病者戦没者遺族等援護法,国家賠償法1条1項,内閣法5条
判旨
国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、憲法の一義的な文言に違反するにもかかわらずあえて立法を行わないなどの例外的な場合に限られる。戦争犠牲に対する補償は国の裁量的権限に属し、立法を怠ったとしても同条の違法評価を受けるものではない。
問題の所在(論点)
国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項上の違法と評価されるための要件、および一般戦災被害を放置する立法不作為がその要件を満たすか。
規範
国会議員は原則として国民全体に対し政治的責任を負うにとどまり、個別の国民に対し法的義務を負うものではない。したがって、立法行為(不作為を含む)が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、立法内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行う(または行わない)という、容易に想定し難いような例外的な場合に限られる。
重要事実
一般民間人被災者である上告人らが、戦傷病者戦没者遺族等援護法が旧軍人軍属等のみを対象とし、一般被災者を除外している点は憲法14条等に違反すると主張。そのような差別を是正する立法を怠った国会議員および法律案を提出しなかった内閣の不作為は、国家賠償法1条1項に基づき違法であるとして、国に対し損害賠償を求めた。
あてはめ
まず、憲法には一般被災者への立法を積極的に命ずる明文の規定が存在しない。また、戦争犠牲や損害は国の存亡に関わる非常事態下で国民が等しく受忍すべきものであり、憲法が当然に補償を予想しているものではない。これに対する補償は政策的見地に基づく国会の裁量的権限に委ねられるべき事項である。そうである以上、本件の立法不作為が「憲法の一義的な文言に違反するにもかかわらずあえて立法を怠った」という例外的な場合に当たると解する余地はない。国会議員の不作為が違法でない以上、内閣の法律案不提出も違法とはなり得ない。
結論
国会または内閣の不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。
実務上の射程
立法不作為による国家賠償請求の基本枠組み(在宅投票制度廃止事件判決の踏襲)を示す。特に、戦争犠牲については「戦争受忍論」を背景に広範な立法裁量を認め、違法性を厳格に否定する射程を持つ。
事件番号: 昭和27(オ)152 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、上告理由が民事上告事件の審判の特例に関する法律の各号に該当せず、法令の解釈に関する重要な事項も含まない場合、原判決の正当性を認めて上告を棄却する。 第1 事案の概要:本件は、上告人が原判決に違法があるとして上告を提起した事案であるが、判決文からは具体的な事件の背景や紛争の内容、第一審…