一 商品取引員が委託証拠金を徴することなしに商品市場における売買取引をしたとしても、右商品取引員と委託者との間の契約及びこれに基づく法律関係の効力に影響を及ぼすものではない。 二 商品取引員は委託を受けた売買取引につき委託者が所定の日時までに委託証拠金を預託しないときは受託建玉を処分することができる旨の商品取引所の受託契約準則の規定は、商品取引員に受託建玉を処分する義務を課するものではない。
一 商品取引員が委託証拠金を徴することなしに商品市場において売買取引をした場合における商品取引員と委託者との間の契約の効力 二 商品取引の委託者が委託証拠金の預託をしない場合における商品取引員の受託建玉の処分義務
商品取引所法96条,商品取引所法97条1項
判旨
商品取引員が委託証拠金を徴収せずに取引を行っても契約の効力に影響はなく、受託契約準則に基づく建玉の処分規定は取引員の権利であって義務ではない。
問題の所在(論点)
1. 委託証拠金の不徴収が、商品取引員と委託者間の契約の効力に影響を及ぼすか。 2. 受託契約準則に基づく建玉の処分規定は、商品取引員に対し、未預託時に直ちに処分すべき義務を課したものといえるか。
規範
1. 商品取引員が委託証拠金をその都度徴収することなく売買取引を行ったとしても、委託者との間の契約および法律関係の効力は妨げられない。 2. 商品取引所の受託契約準則において、委託者が証拠金を預託しない場合に取引員が建玉を処分できる旨の規定は、取引員の損害防止を目的として処分権限を付与したものであり、取引員に処分の義務を課すものではない。
重要事実
商品取引員(被上告人)が、委託者(上告人)から委託証拠金の預託を受けることなく商品市場での売買取引を継続した。名古屋穀物商品取引所の受託契約準則13条1項には、証拠金が所定日時までに預託されないときは、取引員が委託者の計算において建玉を処分できる旨の定めがあったが、取引員は直ちに処分を行わなかった。その後、相場変動等により生じた損失等について争いが生じた。
あてはめ
1. 証拠金徴収の有無は、取引の適正を確保するための行政的・監督的な要請に基づくものであり、私法上の契約の有効性を左右するものではない。したがって、不徴収であっても契約は有効である。 2. 受託契約準則13条1項は「処分することができる」との文言であり、これは証拠金未預託による取引員の債権回収不能リスクを回避するための「権限」を認めた規定と解される。委託者の損失拡大を防止するための義務(信義則上の義務等)を直ちに導き出すものではない。
結論
1. 証拠金の不徴収は契約の効力に影響しない。 2. 商品取引員に建玉の処分義務はなく、処分しなかったことによる損害賠償責任も原則として負わない。
実務上の射程
商品先物取引や証拠金取引全般において、取引所規則(準則)の規定が「私法上の義務」か「単なる権限」かを区別する際のリーディングケースである。特に、証拠金不足(追証)発生時に取引員が強制決済を行わなかったことによる損失拡大の責任を委託者が追及する場合、特段の事情がない限り、取引員に決済義務はないとするロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和43(オ)852 / 裁判年月日: 昭和43年12月20日 / 結論: 棄却
商品の清算取引において、仲買人は、委託者が追証拠金を預託する意思のないことが明白なときは、特段の事情のないかぎり、東京穀物商品取引所受託契約準則第八条第三項所定の期限まで待つことなくただちに手仕舞をすることができる。