名古屋穀物商品取引所受託契約準則一六条に違反して委託証拠金なしに信用取引により穀物が売買されても、右違反は、商品仲買人と委託者との間の契約の効力に影響を及ぼすものではない。
名古屋穀物商品取引所受託契約準則一六条に違反して委託証拠金なしに信用取引がなされた場合における商品仲買人と委託者との間の契約の効力
名古屋穀物商品取引所受託契約準則16条
判旨
商品仲買人が委託証拠金を徴収せずに取引を行ったとしても、その私法上の効力は妨げられない。また、委託者が証拠金を預託しない場合の建玉処分は、仲買人の義務ではなく権利にすぎない。
問題の所在(論点)
商品仲買人が委託証拠金を徴収せずに取引を行った場合、その取引の私法上の効力が否定されるか。また、証拠金の預託がない場合に仲買人が建玉を処分すべき義務を負うか。
規範
商品取引所法等の規定により商品仲買人が委託証拠金を徴収すべきとされている場合であっても、これに反する取引は主務大臣による監督上の処分対象になるにとどまり、仲買人と委託者との間の契約および法律関係の私法上の効力には影響を及ぼさない。また、受託契約準則において、委託者が証拠金を預託しない場合に仲買人が建玉を処分できる旨の規定は、仲買人の権利を定めたものであり、処分すべき義務を課したものとは解されない。
重要事実
上告人はD商事(商品仲買人)に委託して商品先物取引を行ったが、委託証拠金の範囲内でのみ取引を行う旨の約定が存在したとは認められなかった。仲買人は、委託証拠金の徴収や追証の預託がない状態で取引を継続した。これに対し、委託者である上告人は、証拠金規制に違反した取引の無効や、仲買人が建玉を処分しなかったことによる損害賠償等を主張して争った。
あてはめ
本件において、仲買人が証拠金をその都度徴収せずに取引を行った事実は認められる。しかし、証拠金規制は監督上の取締規定としての性質を有するにすぎず、これに違反したからといって直ちに私法上の契約が無効になるものではない。また、名古屋穀物商品取引所受託契約準則の規定は、委託者の証拠金預託義務を定める一方で、それがない場合の建玉処分は仲買人の権利として規定されている。したがって、仲買人が適時に処分を行わなかったとしても、直ちに義務違反の評価を受けるものではない。
結論
商品仲買人が証拠金を徴収せずに取引を行っても、その私法上の効力は有効である。また、仲買人は証拠金不足を理由とする建玉処分の義務を負わないため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
行政法上の取締規定と私法上の効力の分離を示す典型例である。商品先物取引に限らず、強行規定の私法上の効力が問題となる場面での「取締規定」該当性の判断基準として活用できる。答案上は、法令の趣旨が公益的見地からの監督にあるのか、当事者間の公平な取引保護にあるのかを区別する際に参照すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)713 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 棄却
一、商品取引所法に基づいて定められた受託契約準則は、当事者間に特別の約定のないかぎり、当該取引所の商品市場における売買取引の委託について、委託者を、その意思のいかんにかかわらず、また、その知、不知を問わず、拘束する。 二、商品取引所法に基づいて定められた受託契約準則が改正された場合には、右改正後の受託契約準則は、当事者…
事件番号: 昭和43(オ)852 / 裁判年月日: 昭和43年12月20日 / 結論: 棄却
商品の清算取引において、仲買人は、委託者が追証拠金を預託する意思のないことが明白なときは、特段の事情のないかぎり、東京穀物商品取引所受託契約準則第八条第三項所定の期限まで待つことなくただちに手仕舞をすることができる。