証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引により株式が売買されても、右違反は、証券業者と委託者との間の契約の効力に影響を及ぼすものではない。
証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引がなされた場合における証券業者と委託者との間の契約の効力。
民法91条,民法642条,商法552条,証券取引法49条
判旨
証券取引法(現行の金融商品取引法)に定める委託証拠金の規制は、証券業者と委託者間の契約の私法上の効力に影響を及ぼすものではない。したがって、委託証拠金の授受がない信用取引であっても、その私法上の取引自体は有効である。
問題の所在(論点)
証券業者が法令に違反して委託証拠金を受領せずに信用取引を行った場合、その私法上の取引の効力(有効性)は否定されるか。取締法規違反と私法上の契約の効力が問題となる。
規範
証券取引法(現行法を含む)における委託証拠金制度は、主として証券業者が委託者に対して委託契約により生ずる債権を担保するためのものである。そのため、同法に基づく証拠金規制に違反する態様で取引が行われたとしても、その違反は私法上の契約の効力を否定する根拠とはならず、契約に基づく法律関係の効力に影響を及ぼさない。
重要事実
上告人(委託者)と証券業者の間で株式の信用取引が行われたが、その際、証券取引法49条(当時の規定)が定める委託証拠金の授受がなされないまま売買が実施された。上告人は、証拠金規制に違反した取引であることを理由に、当該取引の無効等を主張して争った。
あてはめ
委託証拠金は、証券業者の債権を担保する性質を有するものである。そうすると、証拠金の授受がないことは担保の欠如を意味するに過ぎず、取引の合意そのものを無効とする理由にはならない。証券業者が規制に違反して取引を行ったとしても、それは行政上の監督や処分の対象となるにとどまり、委託者との間の売買契約等の私法上の効力を左右するものではないと解される。
結論
委託証拠金なしになされた信用取引による株式の売買であっても、その私法上の契約は有効である。
実務上の射程
行政法規(取締法規)違反が私法上の契約効力に影響するかという論点において、本判例は「影響しない」とする典型例である。証券取引に限らず、投資家保護や取引の安全の観点から、法令違反があっても直ちに無効とはならないという判断枠組みを示す際に有用である。
事件番号: 昭和39(オ)1041 / 裁判年月日: 昭和41年10月6日 / 結論: 棄却
商品取引所法第九六条に基づいてD穀物商品取引所が定めた受託契約準則第三条に準拠しないからといつて、商品仲買人の受託契約は、無効とはならない。
事件番号: 昭和48(オ)910 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: 棄却
一、商品取引員が商品取引所法九一条一項に違反して営業所以外の場所で取引の委託を受けても、同条項は商品取引員に対する訓示的規定たるにすぎないから、右違反は、受託契約の効力を左右しない。 二、商品取引員が商品取引所法九四条一項一号に違反して不当な委託勧誘をなし、それによつて成立した受託契約であつても、右契約が商品取引に経験…