一、商品取引員が商品取引所法九一条一項に違反して営業所以外の場所で取引の委託を受けても、同条項は商品取引員に対する訓示的規定たるにすぎないから、右違反は、受託契約の効力を左右しない。 二、商品取引員が商品取引所法九四条一項一号に違反して不当な委託勧誘をなし、それによつて成立した受託契約であつても、右契約が商品取引に経験のある顧客の自由な判断ないし意思決定によるものであるときは、公序良俗に反するところはなく、契約の効力に影響がない。
一、商品取引所法九一条一項に違反して営業所以外の場所でなされた受託契約の効力 二、商品取引所法九四条一項一号に違反する不当な勧誘に基づいてなされた受託契約が有効とされた事例
商品取引所法91条1項,商品取引所法94条1項1号
判旨
商品取引所法の勧誘や受託手続に関する禁止規定に違反したとしても、直ちに委託契約が当然に無効となるわけではなく、特に出不当な勧誘があっても顧客の自由な判断に基づく場合は契約の効力は維持される。
問題の所在(論点)
商品取引員による商品取引所法の各規定(営業所以外の受託禁止、書面交付義務、証拠金徴収義務、不当勧誘の禁止)に違反する行為が、当該委託契約の私法上の効力(公序良俗違反による無効等)に影響を及ぼすか。
規範
商品取引所法91条1項(営業所以外の受託禁止)は訓示規定にすぎず、同法96条1項(書面交付等)や97条1項(委託証拠金の徴収)の違反も契約の効力を左右しない。また、同法94条1項1号に違反する不当な委託勧誘があっても、当該契約が「商品取引に経験のある顧客の自由な判断ないし意思決定」に基づく場合には、公序良俗に反するものとはいえず、契約の効力に影響を及ぼさない。
重要事実
上告人と商品取引員である被上告人との間で商品取引委託契約が締結された。しかし、被上告人の外務員が(1)営業所以外の場所で委託を受け、(2)法定の書面を交付・徴収せず、(3)委託証拠金を徴収せず、さらに(4)不当な委託勧誘を行っていた。上告人はこれらの法違反を理由に、本件委託契約の無効を主張して争った。
事件番号: 昭和56(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和57年11月16日 / 結論: 棄却
商品取引員が商品取引所法(昭和四九年法律第二三号による改正前のもの)九一条の二第一項の規定に違反して登録外務員以外の者をして先物売買取引委託契約を締結させても、右違反は、右契約の効力に影響を及ぼさない。
あてはめ
まず、営業場所や受託手続に関する法規定は行政上の取締規定ないし訓示規定であり、これらに違反しても契約自体を無効とする性質のものではない。次に、不当な勧誘についてみると、本件の上告人は「商品取引に経験のある顧客」であり、その勧誘を受けてもなお、自らの「自由な判断ないし意思決定」によって契約を締結したものと認められる。したがって、勧誘態様に法令違反があったとしても、社会妥当性を著しく欠く公序良俗違反(民法90条)とまではいえない。
結論
本件商品取引委託契約は有効である。商品取引所法の各規定に違反する事実があっても、契約の効力に消長をきたすものではない。
実務上の射程
行政法規(取締規定)違反と私法上の契約の効力の切り分けを示す典型例である。特に「顧客の経験」や「意思決定の自由」を基準に、適合性原則違反や不当勧誘が公序良俗違反に至るかの境界線を画定する際に活用できる。現代の金融商品取引法下の事案でも、不法行為責任(損害賠償)とは別に、契約自体の無効を主張する場合の解釈指標となる。
事件番号: 昭和33(オ)61 / 裁判年月日: 昭和35年3月18日 / 結論: 棄却
食品衛生法第二一条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではない。