商品取引所法第九六条に基づいてD穀物商品取引所が定めた受託契約準則第三条に準拠しないからといつて、商品仲買人の受託契約は、無効とはならない。
商品取引所が定めた受託契約準則に準拠しない受託契約の効力
商品取引所法96条,東京穀物商品取引所受託契約準則
判旨
商品取引所法に基づき定められた受託契約準則は、取引の公正と委託者保護を目的とする取締規定であり、これに準拠しない受託契約の私法上の効力を左右しない。また、同準則の規定によって民法や商法の代理に関する規定の適用が排除されることはない。
問題の所在(論点)
商品取引所法96条に基づき定められた受託契約準則に違反した受託契約の私法上の効力、および同準則による民法・商法の代理規定の適用の有無が問題となった。
規範
商品取引所法96条1項に基づき商品取引所が定める受託契約準則は、商品市場における売買取引の公正の確保と委託者の保護を目的とするものである。したがって、当該準則は取締規定としての性質を有し、これに準拠せずになされた受託契約であっても、その私法上の効力に消長をきたすものではない。また、同準則が民法や商法の代理に関する規定の適用を排除するものでもない。
重要事実
上告人は、D穀物商品取引所の受託契約準則3条に違反してなされた受託契約の効力を争った。具体的には、商品仲買人が同条所定の手続等に従わずに取引を受託した場合、その契約は無効である、あるいは民法・商法の代理規定の適用が排除されるべきであると主張して上告した事案である。
あてはめ
本件受託契約準則は、商品取引所法96条という行政上の監督規定に基づくものであり、その趣旨は市場の公正と委託者保護にある。このような取締規定への違反は、行政上の制裁の対象にはなり得るものの、直ちに私人間における契約の有効性を否定する根拠とはならない。また、同準則は私法上の代理法理を否定する明文の根拠を持たず、一般法である民法・商法の適用を排斥する性質のものではないと解される。
結論
受託契約準則に違反してなされた契約であっても、その私法上の効力は妨げられない。また、民法・商法の代理に関する規定も依然として適用される。
実務上の射程
行政法規(取締規定)に違反した私法上の行為の効力を論じる際のリーディングケースとして活用できる。答案上は、法規の目的が「公正の確保・保護」にあることを理由に、効力規定(無効)ではなく取締規定(有効)と解する論理構成のモデルとなる。また、特別法的な準則が一般法(民商法)を排除するかという解釈指針としても有用である。
事件番号: 昭和48(オ)553 / 裁判年月日: 昭和50年10月3日 / 結論: 破棄差戻
顧客が、自己の氏名を秘匿し他人名義を使用して商品取引業者に商品先物取引の委託をした場合において、右委託が大部分外務員を通じてのみ行われた場合であつても、当該外務員が右他人名義を利用して手張り行為を行い、顧客も警戒して委託証拠金を妻名義にし、かつ、清算時における損金が同証拠金額の範囲内にとどまるよう制限したなど原判示の事…
事件番号: 昭和56(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和57年11月16日 / 結論: 棄却
商品取引員が商品取引所法(昭和四九年法律第二三号による改正前のもの)九一条の二第一項の規定に違反して登録外務員以外の者をして先物売買取引委託契約を締結させても、右違反は、右契約の効力に影響を及ぼさない。