労働組合の規約上、いわゆる組合員再登録についての定めがなく、組合員がその意思に反して組合員資格を喪失する事由としては除名の制裁を受けたとき以外に定められていない場合において、当該再登録は適格性審査を経て行われるなど判示の事実関係(原判決参照)のもとでは、組合員が右再登録の申請をしなかつたことをもつて組合員資格を喪失したとすることはできない。
労働組合の組合員がいわゆる組合員再登録申請をしなかつたことをもつて組合員資格を喪失したとすることはできないとされた事例
労働組合法第2章
判旨
労働組合において、規約上の再登録申請を行わなかったことを理由に組合員資格を喪失させることは、実質的な組合員資格の剥奪にあたる。したがって、規約に定める除名事由および手続によらない限り、当該措置をもって組合員資格を喪失したとすることは許されない。
問題の所在(論点)
組合規約に定めのない「再登録申請の不作為」を理由として、除名手続を経ずに組合員資格を喪失させることが許されるか。
規範
労働組合が組合員の意思に反してその資格を喪失させることは、実質的な組合員資格の剥奪(除名)に該当する。そのため、労働組合法および組合規約の趣旨に照らし、規約が定める除名事由に基づき、かつ正規の除名手続を経ない限り、特定の作為(再登録申請等)の欠如を理由として当然に組合員資格を喪失させることは認められない。
重要事実
上告人である労働組合は、組合員に対して「再登録申請」を行うよう求めたが、被上告人ら組合員はこれを行わなかった。組合側は、この申請を行わなかったことをもって、被上告人らが組合員資格を喪失したものとして取り扱った。なお、当該組合の規約において、組合員が意思に反して資格を喪失する事由は「除名の制裁を受けたとき」のみと定められていた。
あてはめ
本件における再登録申請を行わないことを理由とする資格喪失の扱いは、組合員の意思に反してその地位を奪うものであり、実質において組合員資格の剥奪(除名)と同義である。本件組合の規約では、意思に反する資格喪失事由を除名に限定している。そうである以上、規約所定の除名事由の存否を確認し、かつ厳格な除名手続を履践することなく、申請の不備という形式的事由のみをもって資格喪失の効果を生じさせることは、規約の定めに反し許されないと解される。
結論
被上告人らは、本件再登録申請をしなかったことをもって組合員資格を喪失したものとすることはできず、依然として組合員としての地位を有する。
実務上の射程
本判決は、労働組合による組合員資格の管理において、規約外の事由による「自動的な資格喪失」を否定し、除名手続の厳格性を維持するものである。答案上は、組合による統制処分や組合員地位の確認が争点となる場面で、除名手続を潜脱するような資格剥奪の違法性を主張する際の根拠として活用できる。
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一 労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約に定める基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益であっても、そのことだけで右の不利益部分について労働協約の効力を未組織の同種労働者に及ぼし得ないとすることはできないが、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結さ…
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