所得税法二五条二項二号の規定は、憲法二九条、八四条に違反しない。
所得税法二五条二項二号の規定の合憲性
憲法29条,憲法84条,所得税法25条2項2号
判旨
利益積立金の資本組入れを利益配当とみなして課税する所得税法の規定は、憲法29条(財産権)及び84条(租税法律主義)に違反しない。
問題の所在(論点)
利益積立金の資本組入れを配当とみなして課税する規定が、憲法29条(財産権)および憲法84条(租税法律主義)に違反するか。
規範
法人が利益積立金を資本金に組み入れる行為は、実質的に見れば、株主等に対して利益の配当を行い、その配当された金銭を株主等が再度法人に出資したのと同視できる。したがって、これを配当所得として課税対象とすることは、立法政策の合理的な範囲内であり、租税法律主義や財産権の保障に抵触するものではない。
重要事実
上告人は、法人税法2条18号に規定される「利益積立金」が資本金へ組み入れられた際、これを所得税法25条2項2号(当時)に基づき利益配当とみなされ所得税を課された。上告人は、この「みなし配当」課税が、実質的な所得がないにもかかわらず課税するものであり、憲法29条の財産権侵害および憲法84条の租税法律主義違反に当たると主張して争った。
事件番号: 平成26(行ヒ)167 / 裁判年月日: 平成27年10月8日 / 結論: 破棄差戻
権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,① 同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②…
あてはめ
判旨は、昭和30年3月23日の大法廷判決を引用し、利益積立金の資本組入れが「株主に対して利益を分配し、同時に株主から法人へ再投資された」という二段階の法的・経済的事実を簡略化したものと解釈している。このような擬制は、担税力の把握という租税政策上の合理的な理由に基づくものであり、あらかじめ法律で明確に規定されている以上、租税法律主義の要請に反せず、また正当な補償を要するような財産権の不当な侵害にも当たらないと解される。
結論
所得税法25条2項2号(当時)の規定は、憲法29条および84条に違反しない。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「みなし配当」課税の合憲性を肯定したリーディングケースである。答案上では、租税法律主義における「課税要件明確性の原則」や、所得概念の構成における立法府の裁量を論じる際の根拠として活用できる。特に、経済的実態に着目した課税の合理性を肯定する文脈で引用すべきである。
事件番号: 平成4(行ツ)127 / 裁判年月日: 平成5年2月18日 / 結論: 棄却
個人の国又は地方公共団体に対する寄付金に関する所得控除について限度額を設けている所得税法七八条一項、二項一号の規定は、法人税法三七条三項一号が法人に関する同様の寄付金についてその全額の損金算入を認めているからといって、憲法一四条一項、八四条に違反するものではない。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…