控訴期間内に控訴人使者の署名捺印のある第一の控訴状が控訴状の提出を委任する旨の控訴人代表者名義の委任状とともに控訴裁判所に提出され、次いで控訴期間経過後に第一の控訴状と同日付をもつて控訴人代表者の署名捺印のある第二の控訴状が提出されたときは、特段の事情のない限り、控訴期間内に第一審判決に対する適法な控訴の提起があつたものと解するのが相当である。
適法な控訴の提起があつたとされた事例
民訴法244条,民訴法367条,民訴法368条
判旨
控訴期間内に提出された控訴状に作成名義人の署名押印を欠く不備があっても、同時に提出された委任状等から控訴の趣旨が明らかであり、後の追完により瑕疵が補正されたと認められる場合には、期間内に適法な控訴があったものと解すべきである。
問題の所在(論点)
控訴状に作成名義人の署名押印を欠くという形式的な瑕疵がある場合に、同時に提出された委任状や期間経過後の追完書面を考慮して、控訴期間内の適法な控訴提起を認めることができるか。
規範
訴訟行為の有効性は、形式的な不備のみで判断せず、提出された書面を一体として把握し、当事者の真意(訴訟意思)が客観的に看取できるか否かによって判断すべきである。書面に作成名義人の署名押印を欠く瑕疵がある場合でも、①同時に提出された他の書面(委任状等)によって当該瑕疵が実質的に補完されていると認められるか、または②事後に名義人の署名押印がある書面が提出されることで瑕疵が補正されたと認められるときは、特段の事情がない限り、当初の提出時に遡って有効な訴訟行為がなされたものと解する。
重要事実
上告人は、控訴期間内に「使者」の署名捺印のみがある控訴状(第一の控訴状)を、上告人代表者名義の委任状とともに提出した。同委任状には、当初控訴権限を委任する旨が記載され、後に控訴状を提出する旨に訂正された形跡があった。その後、控訴期間経過後に、改めて上告人代表者の署名捺印のある控訴状(第二の控訴状)が提出された。原審は、第一の控訴状は名義人の署名押印がなく無効であり、第二の控訴状は期間徒過であるとして、控訴を却下した。
あてはめ
第一の控訴状と上告人代表者名義の委任状を一体的に観察すれば、上告人が第一審判決に対し控訴を提起する趣旨は明確に看取できる。また、当該委任状における代表者の記名押印は、第一の控訴状の署名押印の欠如という瑕疵を実質的に補完するものといえる。さらに、期間経過後であっても代表者の署名捺印がある第二の控訴状が提出されたことにより、第一の控訴状の瑕疵は補正されたと解するのが相当である。したがって、特段の事情がない限り、第一の控訴状の提出時に遡って適法な控訴があったと評価すべきである。
結論
適法な控訴提起があったものと解すべきであり、控訴を却下した原決定には訴訟行為の解釈を誤った違法があるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
訴訟行為における形式的瑕疵の治癒(補正)の可能性を広く認めた事例である。答案上は、訴訟行為の有効性が争われる場面で「訴訟経済」や「当事者の意思の尊重」という観点から、形式的不備を理由に直ちに却下せず、他の書面との一体的解釈や事後の補正を認める際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)716 / 裁判年月日: 昭和37年7月27日 / 結論: 棄却
一 控訴審で新らたに証人等の尋問申請があつた場合でも、その控訴審は、必ずしも、当該証人等を取り調べることを要しない。 二 訴訟係属中の事件について調停の申立があつたときでも、受訴裁判所は、必ずしも、調停の終了するまで訴訟手続を中止することを要しない。
事件番号: 昭和47(オ)257 / 裁判年月日: 昭和47年11月2日 / 結論: 破棄差戻
高等裁判所の判決言渡が三人の裁判官による合議体によつてされなかつた旨の違法が上告理由で指摘されたのちにおいては、判決言渡が右の合議体によつてされた旨を記載する口頭弁論調書(更正調書)を作成することは許されない。