高等裁判所の判決言渡が三人の裁判官による合議体によつてされなかつた旨の違法が上告理由で指摘されたのちにおいては、判決言渡が右の合議体によつてされた旨を記載する口頭弁論調書(更正調書)を作成することは許されない。
上告理由で指摘された後に口頭弁論調書の作成が許されないとされた事例
裁判所法18条,民訴法142条,民訴法147条
判旨
口頭弁論の方式に関する規定の遵守を証明する唯一の証拠である口頭弁論調書において、裁判官の欠落等の手続違背が上告理由として指摘された後は、当該違背を解消する内容の更正調書を作成しても、民事訴訟法上の証明効は認められない。
問題の所在(論点)
口頭弁論調書の記載によれば裁判所構成に違法(裁判所法18条違反)がある場合において、上告理由でその違法が指摘された後に作成された更正調書によって、当該違法の存在を否定することができるか。
規範
口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、口頭弁論調書によってのみ証明することができる(民訴法160条2項参照)。もっとも、当該手続の違法が既に上告理由として指摘された後においては、当該指摘に係る違法がない旨を記載した更正調書には、同条項所定の証明効を認め得ない。
重要事実
原審の第11回口頭弁論調書(判決言渡期日)の裁判官氏名欄には、裁判官2名の氏名のみが記載されており、3名の合議体による言渡しがなされたことが確認できない状態であった。上告人がこの手続違背を上告理由書において指摘した後、原審は「裁判官1名の氏名が脱漏していた」として、当該氏名を併記する更正調書を作成した。
あてはめ
本件の口頭弁論調書には裁判官2名の記載しかなく、そのままでは三人の裁判官による合議体による言渡しという方式が遵守されていない。これに対し、上告理由の指摘後に作成された更正調書は、既に顕在化した手続違背を事後的に補うものである。しかし、上告理由の指摘後になされた更正によって証明効を認めてしまうと、調書による証明制度の厳格性が損なわれるため、本件更正調書には証明効が認められない。したがって、当初の調書の記載通り、合議体の構成に欠缺があったものと判断せざるを得ない。
結論
原審の判決手続には裁判所法18条に違反する法律違背がある。よって、原判決は破棄を免れず、本件を差し戻すべきである。
実務上の射程
調書の証明効(民訴法160条2項)の例外的な限界を示す。実務上、調書の記載漏れは更正可能だが、上告理由として指摘された「後」の更正では手遅れになるという極めて厳格な時間的限界を画している。答案上は、判決手続の適法性が争点となる場面で、調書の更正による瑕疵治癒の可否を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和31(オ)691 / 裁判年月日: 昭和33年11月4日 / 結論: 破棄差戻
一 従前の口頭弁論の結果を陳述した旨の記載が、調書の完成後、立会書記官以外の者によつてなされたときは、適法に弁論の更新が行われたものと認めるをえない。 二 裁判官の更迭があつたのにかからず、適法に弁論の更新手続をしないで、更迭後の裁判官によつてなされた判決は、民訴第三九五条第一号の違法がある。
事件番号: 昭和47(オ)1007 / 裁判年月日: 昭和50年1月31日 / 結論: 棄却
債務者所有の不動産が譲渡担保とされ所有権移転請求権保全の仮登記がされたというだけでは、いまだ債務者において右不動産の不法占有者に対する明渡及び賃料相当損害金の請求が許されないわけではない。