立会書記官の氏名の記載を欠く口頭弁論調書は無効である。
立会書記官の氏名の記載を欠く口頭弁論調書の効力
民訴法143条2号,民訴法147条
判旨
口頭弁論調書に立会書記官の氏名の記載がない場合、当該調書は効力を有さず、口頭弁論終結の時期が不明となるため、判決に関与した裁判官が基本たる口頭弁論に関与したか否かを確認できず、法律に従って裁判所を構成しなかった違法が生じる。
問題の所在(論点)
口頭弁論調書に立会書記官の氏名の記載がない場合、その調書は有効か。また、調書の効力が否定されることにより、口頭弁論に関与した裁判官の適格性に疑義が生じる場合、民事訴訟法上のどのような違法を構成するか。
規範
口頭弁論調書における立会書記官の氏名の記載は、調書の形式的記載事項であり、その遵守は調書によってのみ証明できる(民訴法147条、現160条1項)。したがって、立会書記官の記載を欠く調書は、権限ある者によって作成されたものとは認められず、調書としての効力を有しない。調書の効力が認められない結果、口頭弁論終結の時期が不明となる場合には、判決書に署名した裁判官が基本たる口頭弁論に関与した者であることを証明できず、裁判所の構成に違法(民訴法395条1項1号、現312条2項1号)があるものと解する。
重要事実
原審の第7回口頭弁論調書には、立会書記官の氏名が記載されていなかった。この第7回口頭弁論調書には、口頭弁論終結を告知した旨の記載があったが、直前の第6回口頭弁論調書には続行期日の指定がなされた旨の記載があるのみで、記録上それ以外の時期に口頭弁論終結決定がなされた事実は認められなかった。その結果、判決書に署名した裁判官が、実際に終結時の口頭弁論に関与したかどうかが記録上不明確となった。
あてはめ
本件第7回口頭弁論調書は立会書記官の氏名の記載を欠くため、調書としての効力を認めがたい。そうすると、同調書に記載された「口頭弁論終結の告知」の事実も調書によって証明されないことになり、口頭弁論の終結時期が客観的に明らかではなくなる。その結果、判決を行った裁判官が、基本となるべき口頭弁論(口頭弁論の終結)に実際に関与したのかを検証することが不可能となった。
結論
原判決には、法律に従って裁判所を構成しなかったという絶対的上告理由(民訴法395条1項1号、現312条2項1号)の違法がある。したがって、原判決は破棄を免れず、差し戻すべきである。
実務上の射程
手続上の形式的要件(調書の記載事項)の欠如が、実体的な裁判の正当性(裁判所の構成)に直結することを示した判例である。司法試験等の答案上では、裁判所の適法な構成(直接主義の要請)が争点となる場面で、調書の証明力規定(現160条)と関連付けて論じる際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和47(オ)257 / 裁判年月日: 昭和47年11月2日 / 結論: 破棄差戻
高等裁判所の判決言渡が三人の裁判官による合議体によつてされなかつた旨の違法が上告理由で指摘されたのちにおいては、判決言渡が右の合議体によつてされた旨を記載する口頭弁論調書(更正調書)を作成することは許されない。
事件番号: 昭和48(オ)552 / 裁判年月日: 昭和49年2月14日 / 結論: 棄却
確定判決の弁論手続に民訴法一四三条違反の違法があることを理由として、他の訴訟において、当該判決の無効を主張することは、許されない。
事件番号: 昭和24(オ)343 / 裁判年月日: 昭和25年8月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論期日の指定は必ずしも書面で行うことを要せず、裁判官の記名押印等により当該裁判官の意思に基づきなされたことが認められれば適法である。 第1 事案の概要:上告人は、第一審の記録における弁論再開決定書(74丁)と期日指定に関する書面(75丁)との間に契印がないこと、および後者の書面に裁判官の署名…
事件番号: 昭和37(オ)832 / 裁判年月日: 昭和39年7月21日 / 結論: 破棄差戻
基本たる口頭弁論に関与しない裁判官の関与した判決は、民訴法第三九五条第一項第一号に該当する違法があるものと解すべきである。