一 一筆の土地の一部分の売買契約において、売却部分の面積が六〇坪となるよう右土地の南端から八メートル余の地点で東西に線を引くと楠の根がかかることになり、また、その西側部分については、後日、東西の市道からの進入路を拡幅するために必要な部分を買主において提供することが予定されていたので、売買契約書上では約六〇坪と表示し、分筆・移転登記の際の正確な測量に基づいて売り渡すべき土地の範囲を確定することにしたときは、売買の対象である土地部分が具体的に特定しているとはいえない。 二 多数持分権者が、共有地の一部分についての売買契約を締結し、具体的な土地の範囲を確定しないまま、おおよその部分を買主に引き渡してこれを占有使用させているときは、右占有使用の承認が共有者の協議を経ないものであつても、少数持分権者は、当然には買主に対して右土地部分の返還を請求することができない。
一 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例 二 多数持分権者との間の売買契約に基づいて共有地の一部分の引渡を受けた者に対する少数持分権者からの返還請求ができないとされた事例
民法206条,民法249条,民法252条,民法555条
判旨
共有地の多数持分権者から占有を承認された第三者に対し、少数持分権者は、当然には共有物の明渡を請求することはできない。また、一筆の土地の一部分の売買では、対象が具体的に特定されない限り、当然に所有権や共有持分権が移転することはない。
問題の所在(論点)
1. 土地の一部分を「約◯坪」として売買した場合に共有持分権が移転するか。2. 多数持分権者から占有を承認された第三者に対し、少数持分権者は単独で共有物の明渡を請求できるか。
規範
1. 一筆の土地の一部分の売買において、対象となる土地部分が具体的に特定されない限り、所有権または共有持分権は移転しない。2. 共有地の多数持分権者が協議を経ずに共有地を占有使用している場合、少数持分権者は当然にはその明渡を請求できないところ、この理は多数持分権者から占有を承認された第三者と少数持分権者との関係にも妥当する。
事件番号: 昭和31(オ)582 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合員が組合の共同事業のために買い受けた土地は、登記名義にかかわらず組合財産として組合員の共有に属するが、他の組合員全員が持分を放棄し特定の組合員の単独所有とすることを承認した場合には、当該組合員の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、D、Eの3名は、アイスケーキ製造販売の共同事業(組合…
重要事実
土地の4分の3の持分を有する共有者ら(多数持分権者)が、被告に対し南側部分「約60坪」を売り渡す契約を締結した。この際、正確な範囲は分筆・登記時の測量で確定させる合意であった。被告は代金の一部を支払い、当該部分に建物を建築して占有を開始した。これに対し、4分の1の持分を有する原告(少数持分権者)が、共有物の保存行為(民法252条ただし書)または持分権に基づく妨害排除請求として、建物収去土地明渡を求めて提訴した。
あてはめ
1. 売買対象が「約60坪」とされ将来の測量で確定する合意に留まる以上、目的物が具体的に特定されたとはいえず、被告は共有持分権を取得していない。2. しかし、被告の占有は4分の3の持分を有する多数持分権者の承認に基づくものである。共有物の管理(252条本文)に関し協議を経ていなくとも、多数持分権者の占有が当然には不法占有とならない以上、その承認を得た第三者も同様である。したがって、少数持分権者である原告は、保存行為としても持分権に基づく請求としても、当然には明渡を求めることはできない。
結論
被告が共有持分権を取得したとする原審の判断は誤りであるが、原告の明渡請求を棄却した結論は正当として、上告を棄却した。
実務上の射程
多数持分権者が独断で行った占有(またはその承認を受けた第三者の占有)に対し、少数持分権者が明渡請求を行う際の抗弁として機能する。司法試験では「保存行為」としての明渡請求の可否を論じる際の必須判例である。
事件番号: 昭和36(オ)397 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
共有物を目的とする貸借契約の解除は、共有者によつてされる場合は、民法第二五二条本文にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当すると解すべきであり、右解除については、民法第五四四条第一項の規定は適用されない。
事件番号: 昭和42(オ)890 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 破棄差戻
通常の共同訴訟においては、共同訴訟人間に共通の利害関係があるときでも、補助参加の申出をしないかぎり、当然には補助参加をしたと同一の効果を生ずるものではない。
事件番号: 昭和46(オ)922 / 裁判年月日: 昭和47年7月18日 / 結論: その他
一、旧民法(明治三一年法律第九号)施行当時において生前相続により不動産所有権を承継した家督相続人は、その登記を経なければ所有権取得をもつて第三者に対抗することができず、被相続人から同一不動産の遺贈を受けた者は、同時に被相続人の遺産相続人である場合でも、右第三者にあたる。 二、夫がその所有の土地を無償で使用することを妻に…
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…