一、旧民法(明治三一年法律第九号)施行当時において生前相続により不動産所有権を承継した家督相続人は、その登記を経なければ所有権取得をもつて第三者に対抗することができず、被相続人から同一不動産の遺贈を受けた者は、同時に被相続人の遺産相続人である場合でも、右第三者にあたる。 二、夫がその所有の土地を無償で使用することを妻に対して許諾し、妻がその地上に建築した建物に、夫婦で同居しているなど判示の事情がある場合でも、他に特段の事情がないときは、右土地の利用関係をもつて、建物所有を目的とする地上権が設定されたものと認めることはできない。
一、生前相続による不動産所有権の取得と同一不動産の遺贈を受けた遺産相続人に対する対抗 二、夫婦間の土地利用関係が地上権の設定とは認められないとされた事例
民法177条,民法265条,民法593条
判旨
不動産を遺贈された者は、家督相続による所有権取得を主張する者に対し民法177条の「第三者」に該当する。また、夫婦間等の親族間における土地の無償使用関係は、特段の事情がない限り、地上権ではなく使用貸借と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 被相続人から遺贈を受けた者は、遺登登記を備えることで、それ以前に家督相続により所有権を取得した者に対し、民法177条の「第三者」として対抗できるか。 2. 夫婦間で土地を無償使用させている場合、その使用権原は地上権と認められるか。
規範
1. 被相続人から不動産の遺贈を受けた者は、特定承継人として民法177条の「第三者」に該当し、登記なくして所有権取得を主張する者に対抗できる。受遺者が同時に相続人として登記義務を承継する立場であっても、その結論は妨げられない。 2. 親族間における不動産の無償使用は、情義に基づく明確な権利設定を欠くものが通常であり、原則として使用貸借契約と解すべきである。これを無償の地上権と認めるには、当事者が特に強固な権利設定を意図したと認められる「特段の事情」を要する。
事件番号: 昭和42(オ)268 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
甲から不動産所有権の譲渡を受けた乙が、所有権取得登記未経由のまま、右不動産を丙に譲渡したのち、かさねてこれを丁に譲渡した場合において、丙は、自己の所有権取得登記を経由しないかぎり、その所有権取得を丁に対抗することができない。
重要事実
D(父)が建物を所有していたが、昭和20年に長男(上告人)が家督相続し、登記を未経由のままだった。Dはその後、建物を長女(被上告人)に遺贈する遺言をし、昭和35年にDが死亡したため被上告人が遺贈を原因とする登記を備えた。また、本件土地についてはDの妻Eが所有していたところ、Dが建物を建築して夫婦で居住し、地代の合意なく無償で使用していた。原審は、この土地使用関係について黙示の地上権設定を認めたため、上告人がその法的性質を争った。
あてはめ
1. 被上告人はDからの遺贈により建物を取得した特定承継人である。上告人は家督相続により所有権を取得したが未登記であり、対抗関係に立つ第三者である被上告人に対し、その取得を主張できない。 2. E・D間は夫婦であり、共同して貸座敷業を営みながら本件土地を無償で使用していたに過ぎない。このような親族間の無償利用は情義に基づく使用貸借とみるのが通常である。原審は、地上権の成立を肯定するに足りる「特段の事情」を具体的に示しておらず、単に地代の合意がないこと等から地上権を推認した点には審理不尽・理由不備がある。
結論
1. 上告人は、登記を備えた被上告人に対し建物の所有権を対抗できない。 2. 夫婦間の無償の土地使用関係は、特段の事情がない限り地上権ではなく使用貸借であるため、地上権の存在を前提に上告人の請求を排斥した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
対抗問題の場面では、受遺者が相続人としての地位を兼ねていても、遺贈を原因とする取得について「第三者」性を認めている。土地利用権の認定においては、親族間の特有の事情(情義)を考慮し、無償かつ強力な権利である地上権の認定には厳格な「特段の事情」を求める枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)1075 / 裁判年月日: 昭和43年2月23日 / 結論: 棄却
法定地上権の地代確定訴訟の係属中、右法定地上権が譲渡され、その後右訴訟の判決が確定した場合においては、その譲受人は、右判決によつて譲渡人と地主との間で確定された右譲受当時の地代を、譲受の時に遡つて支払うべき義務を負うものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)890 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 破棄差戻
通常の共同訴訟においては、共同訴訟人間に共通の利害関係があるときでも、補助参加の申出をしないかぎり、当然には補助参加をしたと同一の効果を生ずるものではない。
事件番号: 昭和34(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の買受人が、当該不動産の賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するためには、譲受人と譲渡人との間で賃貸人たる地位の譲受契約を締結することが必要であり、その代理権の授与も認められる必要がある。 第1 事案の概要:上告人(買受人)は、補助参加人(譲渡人)から本件土地を買い受けるに際し、訴外Dを代理…