弁護士懲戒請求者の異議申出を棄却した日本弁護士連合会の裁決に対し、右請求者が提起した取消訴訟は、不適法である。
弁護士懲戒請求者の異議申出を棄却した日本弁護士連合会の裁決に対し右請求者が提起した取消訴訟の適否
行政事件訴訟法3条3項,行政事件訴訟法9条,弁護士法58条,弁護士法61条
判旨
弁護士法に基づく懲戒請求権等は、懲戒制度の目的を適正に達成するという公益的見地から認められたものであり、請求者個人の利益保護を目的とするものではない。したがって、日本弁護士連合会による異議申出棄却の裁決に対し、懲戒請求者がその取消しを求める訴えを提起することは、法律の規定がない限り不適法である。
問題の所在(論点)
弁護士法上の懲戒請求者が、日本弁護士連合会の異議申出棄却裁決の取消しを求める訴訟を提起する法律上の利益(原告適格)を有するか。また、懲戒を受けた弁護士に出訴が認められる一方で請求者に認められないことは不当か。
規範
行政訴訟における原告適格(又は訴えの利益)の有無は、当該処分の根拠法規が個人の個別的利益を保護する趣旨を含むか否かにより判断される。弁護士の懲戒制度は、弁護士会等の自主的判断に基づき綱紀・信用・品位の保持を図る公益を目的とする。したがって、懲戒請求権及び異議申立権は公益的見地から特に認められたものに過ぎず、法律に特段の規定がない限り、請求者による裁決の取消訴訟は認められない。
重要事実
上告人(懲戒請求者)は、弁護士会に対し特定の弁護士の懲戒を請求したが、同会が懲戒をしない決定をしたため、日本弁護士連合会(被上告人)に対して異議を申し出た。しかし、日本弁護士連合会がこの異議申出を棄却する旨の裁決をしたため、上告人は当該裁決の取消しを求めて提訴した。原審は本件訴えを不適法として却下したため、上告人が最高裁に上告した事案である。
事件番号: 昭和48(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和51年3月4日 / 結論: 棄却
一、弁護士法五八条により弁護士の懲戒を請求した者は、同法六一条により日本弁護士連合会に対してした異議申出を棄却されても、右異議申出棄却裁決につき取消訴訟を提起することを許されない。 二、(省略)
あてはめ
弁護士法58条および61条の規定は、懲戒制度の公益的目的を達成するための手段として懲戒請求権等を認めたものにすぎず、請求者個人の権利保護を目的としていない。懲戒を受ける弁護士については、その身分に重大な影響を及ぼすため出訴が認められるべきだが、懲戒請求者はそうした身分上の不利益を被る立場にない。また、請求者が弁護士の行為により権利侵害を受けた場合でも、民事訴訟等の別途の救済手段が存在するため、請求者に出訴権を認めないことが直ちに権利保護に欠けるとはいえない。
結論
懲戒請求者は本件裁決の取消しを求める訴えについて法律上の利益を有さず、訴えは不適法である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
行政事件訴訟法上の原告適格(9条1項)が争われる事案において、根拠法規が「公益」のみを目的としているのか、それとも「個人の個別的利益」をも保護しているのかを峻別する際のリーディングケースとして活用する。答案上は、弁護士懲戒請求権の法的性質を公益的権利と限定する論拠として引用すべきである。
事件番号: 平成15(行ヒ)68 / 裁判年月日: 平成18年9月14日 / 結論: 破棄自判
外国法人から賃借建物の明渡しに関する交渉を依頼された弁護士が,(1)依頼者に対し,既に相手方から受領していた解決金の一部について,いまだ受領していないなどと虚偽の報告をしたこと,及び(2)独断で相手方と再交渉し,追加立退料を受領しながら,依頼者に報告しないで秘匿したことを懲戒事由として,所属弁護士会から業務停止3月の懲…
事件番号: 昭和33(オ)578 / 裁判年月日: 昭和34年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護士会の退会命令に対する異議申立を棄却した日本弁護士連合会の決定は、原審認定の事情に照らし適法であり、決定後の会費納入の事実はその適否の判断に影響しない。 第1 事案の概要:東京弁護士会に所属する弁護士である上告人が、同会から退会命令を受けた。上告人はこの命令に対し、被上告人である日本弁護士連合…
事件番号: 昭和44(行ツ)68 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
国税に関する処分に対する異議申立てを棄却した決定に対しては、異議決定固有の瑕疵を理由としてその取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 昭和42(行ツ)7 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
一、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過していても、右異議申立は、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の規定により当然に審査請求に移行するものではない。 二、税務署長がした処分につき適法な理由附記のあ…