国税に関する処分に対する異議申立てを棄却した決定に対しては、異議決定固有の瑕疵を理由としてその取消訴訟を提起することができる。
異議申立棄却決定に対する取消訴訟の許否
行政事件訴訟法3条3項,行政事件訴訟法10条2項
判旨
国税通則法上の不服申立てにおいて、異議決定に固有の瑕疵がある場合には、適法な異議決定を受ける権利を確保するため、その決定自体の取消訴訟を提起することができる。ただし、その後の審査裁決によって原処分の一部が取り消されたときは、その限度で異議決定の取消しを求める訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
国税通則法上の異議申立てに対する棄却決定に対し、理由附記の不備等の固有の瑕疵を理由として、その取消しを求める訴えを提起することは認められるか。また、その後の審査裁決によって原処分が一部取り消された場合、訴えの利益に影響を及ぼすか。
規範
行政事件訴訟法10条2項は、処分に対する不服申立てに対する裁決(決定)に固有の違法がある場合に限り、当該裁決等の取消しを求めることができる旨を定めている。国税通則法が二段階の不服手続を設けた趣旨は、処分庁に再考の機会を与え審査庁の負担を軽減するだけでなく、申立人に対し事案を熟知する処分庁による簡便迅速な救済を受ける権利を保障する点にある。また、同法は審査請求において異議決定固有の瑕疵を争うことを認めていない。したがって、適法な異議決定を受ける権利を侵害された者は、異議決定自体の取消訴訟を提起する固有の訴えの利益を有する。
重要事実
上告人は、昭和37年分所得税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を受け、これに対し異議申立てを行った。処分庁(被上告人)は異議申立棄却決定をしたが、上告人は当該決定の理由附記に不備(固有の瑕疵)があるとして、その取消しを求めて提訴した。一方で、上告人は並行して審査請求も行っており、審査庁は原処分の一部を取り消す旨の裁決を出していた。原審は、異議決定自体の取消訴訟を不適法として却下したため、上告人が最高裁に上告した。
事件番号: 昭和42(行ツ)7 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
一、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過していても、右異議申立は、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の規定により当然に審査請求に移行するものではない。 二、税務署長がした処分につき適法な理由附記のあ…
あてはめ
本件において、上告人は異議決定の理由附記に不備があると主張しており、これは決定固有の瑕疵に該当する。国税通則法の構造上、この瑕疵は後の審査請求では争えないため、異議決定の取消しを求める訴えを認める必要性がある。もっとも、訴えの利益については、その後の審査裁決の内容と相関する。審査裁決によって本件原処分の一部が取り消された部分については、当該部分に関する不服は既に解消されており、異議決定の取消しを求める実益が失われている。他方で、審査裁決によっても取り消されず維持された原処分の部分については、なお適法な異議決定を求める利益が存続しているといえる。
結論
異議決定固有の瑕疵を理由とする取消訴訟は適法に提起しうる。ただし、審査裁決により原処分の一部が取り消された部分については訴えの利益を欠き、取り消されなかった部分については訴えの利益が認められる。
実務上の射程
行政事件訴訟法10条2項(裁決主義の例外としての固有の瑕疵)の具体的事例として、理由附記の不備を争う際に活用する。特に、原処分についての審査裁決が先行していても、異議決定(裁決)の取消しを求める利益が当然には消滅しないことを論証する際に重要である。
事件番号: 昭和43(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 破棄差戻
一、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。 二、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過して…
事件番号: 昭和49(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和50年3月13日 / 結論: 棄却
公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ、特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をすることができないわけではない。